2021 Fiscal Year Research-status Report
自律型電離圏観測による赤道ジェット電流-プラズマバブル発生/抑制モデルの実証
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21K03646
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤本 晶子 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (40578803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 修司 九州大学, 国際宇宙天気科学・教育センター, 学術研究員 (60437762)
吉川 顕正 九州大学, 理学研究院, 教授 (70284479)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 宇宙天気 / 電離圏観測 / 機械学習/強化学習 / GPSシンチレーション / プラズマバブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、衛星測位や通信電波伝播等に影響を与え、GPS測位精度の低下や、車輛、船舶、航空機の安全運航に支障をきたす、電離圏電子密度の乱れ「プラズマバブル」のプラズマバブル発生・抑制モデルをグローバルな形成過程の観点から包括的に明らかにすることを目的とし、システム開発、観測・解析、モデル検証の三部構成で実施している。 本年度は、上記の三部構成の中で最も重要な柱となる、プラズマバブル形成・抑制過程のシームレス・マルチ電離圏観測を可能とする計測機器制御システム開発について集中的に取り組み、教師あり機械学習と強化学習を組み合わせてプラズマバブルの発生のあり・なしを予測する学習モデルを開発した。具体的には、時系列データの回帰予測に適した教師あり機械学習モデルの一つ再帰型ニューラルネットワーク(LSTM)をベースとして、入力(説明変数)に太陽風データ、地磁気データを渡したときに、出力(目的変数)としてプラズマバブル発生の有無を返す、2値分類モデルを作成した。そして、この事前学習モデルを内部AIモデルとする電離圏計測機器の観測モード切り替え用の強化学習モデルを作成した。 代表者らが運用する電離圏観測機器FMCWは、世界で唯一、プラズマバブルの発生・成長・抑制を担う日没付近電場構造からプラズマバブルへの時間発展を捉える「イオノゾンデモード」と、F領域電場を計測する「HFドップラーモード」を切り替えながら連続観測できるという利点を持つ。既存のシステムでは、事前にこの2つの観測モードをスケジュール設定するため、実際の電離圏環境を逐次的に追えないというデメリットがあるのに対して、本研究で作成したプラズマバブル発生判別モデルと観測モード切り替え用の強化学習モデルを利用してFMCWの自律制御を実施することで、FMCWの利点を最大限に活かしたシームレス・マルチ電離圏観測が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画に沿って、本年度予定していた「FMCW自律制御システムの根幹となる機械学習モデルの開発」を進めることができた。事前学習モデルのプラズマバブル発生判別精度は62%を達成し、初期モデル精度としておおよそ予測していた成果となった。一方で、観測モード切り替え用の強化学習モデルの精度は53%と、学習に用いた訓練データに偏りがあるなどモデル改善の余地があることから、引き続き高精度なモデル開発に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って、引き続き実施する。具体的には、 高精度なFMCW自律制御システムの開発と、その計測システムによるプラズマバブル発生時のシームレス・マルチ電離圏観測を実施する。並行して、プラズマバブル発生の背景場を決定する赤道地磁気変動EEJとプラズマバブルの相関関係の特定と大気圏電離圏モデルGAIA数値計算による提案モデル実効性の検証を実施する。
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Causes of Carryover |
調達の過程において、当初計画より経費の使用が節約できたため未使用額が発生した。結果生じた次年度使用額については、翌年度分として請求した助成金と合わせて物品費に当てることとする。
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Research Products
(8 results)