2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on Floating Construction methods seeen in flood control buildings in flood habitual areas
Project/Area Number |
21K04422
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
畔柳 昭雄 日本大学, 理工学部, 特任教授 (90147687)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 洪水 / 湛水型氾濫 / 外水型氾濫 / 浮く構法 / 水防建築 / 田中屋 / 洪水常襲地域 / 大禹謨 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年後半から続くコロナウイルス感染という市中状況の中で、2021年は既存の水防建築物に対する事前の現地調査や関連する資料の収集整理を実施する予定にしていた。そのため調査活動等においては制約条件が伴いながらも当初の予定どおり事前の現地調査を実施することとした。しかし、地域においてコロナ感染対策としての施設閉鎖(図書館の閉鎖等)等細かな状況が多々異なって行われていたため、必ずしも満足な事前調査の実施には至らず、今後においても補完的な調査を実施せざるを得ないこととなった。ただし、研究対象とする「浮く」構法を取入れた水防建築に関しては、過去において存在していたことを3ヶ所の地域で見出すことができ、想定していた「浮く」構法の存在を確認することができた。 現地調査では、①徳島県徳島市吉野川流域で「藍」の生産加工を行ってきた田中屋(国指定の文化財)と呼称される民家の現地踏査を行った(家主にインタビュー願い出たがコロナ感染が終了するまで施設閉鎖とのことで観察調査)。②岩手県一関市北上川の氾濫原に立地していた民家(ただし、現地踏査がコロナ外出制限等で遅れた間に、唯一残存していた「浮く」を考慮した民家が解体された)。③石川県金沢市手取川流域に立地した「浮く」を取入れた民家が存在していたことを見出したが、実物の発見には至らず。④常習的な洪水防止のためには建築的対応以外に地域的対応も図られてきていることを歴史的見地から見出した。特に地域一帯で洪水被害を軽減する手立てとして河川の付け替えが図られていた香川県高松市香東川の存在を見出すと共に、その遺構として栗林公園内に「大禹謨」が残されていることを確認した。 また、こうした洪水への対応は地形と関連し「湛水」「外水」氾濫の違いのあることを確認でき、水防建築の建築的対等の違いを生み出していることを見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染という未経験な状況が国内において広まり、外出制限等の感染予防対策が行われているが、地域的状況により種々の対応策が異なっている。そのため、現地において施設閉鎖がなされていたり、対応において制約があり、予定していた調査事項を満足に遂行できない状況が生じた。特に調査対象物件(民家)が個人所有のため、個人的な事情により解体撤去が行われるなど、時間的制約が生じていなければ現地踏査ができた物件があったが、今回は不可になった。そのため、いくつかの課題や問題点は見られたが、関連資料などを見つけたため、今後は資料収集により調査の補完を図ることとする。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた調査計画においては、目標としてきた水防建築に見る「浮く」構法の存在については確認することが資料等によりできた。そのため、今後はこうした構法が生まれてきた自然環境条件(地理・地形・河川環境)や気象条件(降水量・天候)等の分析解明により、建築的な構法が生み出されてきた背景を見出すことができると考え、これらの客観的データの収集を行うことが必要と考える。こうしたデータの収集蓄積により水防建築の誕生の背景が理解できるものと考える。
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Causes of Carryover |
国によるコロナ感染防止措置発令により、現地踏査を予定した地域において必ずしも円滑に実施することはできず、研究の実施の上では種々の弊害(対象物件解体等)も生じていた。そのため、事前の現地踏査が不十分であった地域に再度出向き、予定した調査を完了する。また、代替措置としての資料に基づく物件確認調査については、可能な限り現地の資料館や図書館など文献資料等が所蔵されている施設において調査する。そのための旅費交通費として使用する必要が生じる。また、調査研究を進めることで、新たな研究視点や分析方法を見出すことができたため、それに伴う現地踏査場所が若干増えることが考えられるため、こうした方向での旅費等に使用する。
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