2021 Fiscal Year Research-status Report
高密度ウルトラファインバブル内包コアセルベートによる新規バイオ材料創成
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21K04752
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
五島 崇 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (90709560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二井 晋 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (90262865)
武井 孝行 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (90468059)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / サイクロン / 多孔体 / 旋回強度 / マイクロバブル郡 / 蛇行カラム / ヘンリー定数 / 溶存気体濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
高密度ウルトラファインバブル(UFB)内包コアセルベートの確立と薬剤徐放メカニズムの解明による新しいバイオ材料としての応用の可能性を検討するため、(A)溶解収縮式UFB発生器を用いた気泡サイズ制御技術確立、(B)旋回流式分離装置を用いたUFB凝集体制御技術確立を計画したが、(A)と(B)を融合した(X)多孔体設置サイクロン型の旋回流式分離装置を新たに提案した。サイクロン中心部に設置した多孔体に、溶解性が比較的高くpH調整剤としても機能するCO2を供給して旋回流によりゼラチン(GL)水溶液中にマイクロバブル(MB)を発生させた。生成したMBsは気泡と液体の密度差および高せん断流れの作用により、急速な溶解収縮とMB郡の凝集体形成が生じた。出口管内部では微小なMB郡の蛇行カラムが形成され、液の旋回強度により蛇行カラムの幅や構造が制御された。 GL分子が吸着したMB郡の溶解収縮に伴うUFB凝集体の生成理論を構築するため、精製水中でのCO2-MBの溶解収縮理論を調べた。窒素や酸素と比べてヘンリー定数が数十倍異なるCO2を用いる場合、MB発生直後からの溶解挙動の解析が重要となるが、既存の発生技術ではCO2-FBをバルク液中で静的に単一で生成することが難しく、定量的な解析が進んでいない。そこで単一MBの静的発生法を発明し、CO2気泡の溶解収縮挙動を実験的かつ理論的に評価した。空気飽和水中では初期に急速な溶解収縮を生じるが、溶存する窒素と酸素が気泡内へ拡散し、MBの主成分が窒素と酸素となることがわかった。脱気水を用いると窒素と酸素の気泡内拡散が抑制され、1s程度でMBは溶解消滅した。 今後、脱気処理したGL水溶液とCO2を用いて装置(X)におけるMB郡の凝集体形成理論を構築する。発明した単一MB発生法を用いてGL水溶液中でのMB溶解収縮挙動を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、(A)溶解収縮式UFB発生器により調整したUFB水を用いて(B)旋回流式分離装置を用いたUFB凝集体制御技術の確立を計画していたが、(B)内の液対流時間に対してUFB郡の凝集体を形成するのに要する旋回強度を提案したサイクロン型装置で実現することが困難であることが実験的に推定された。しかし、UFBに比べてボイド率と慣性力が十分大きいMBsの凝集体形成能を注目し、MBのガス種として液体への溶解性が比較的高くかつGLのコアセルベート形成に必須となるpH調整剤としての機能も持ち合わせたCO2を用いた装置(X)を提案することで極短時間で微小なMB郡の形成が可能となり、高密度UFBコアセルベートの形成できる可能性が示唆された。また、精製水を用いてCO2の溶解収縮挙動を明らかにするための定量的な評価手法を構築したため、今後GL水溶液を用いてCO2の溶解収縮挙動を評価できることは明らかである。よって、本研究は計画よりやや遅れているが、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、装置(X)を用いて、気泡サイズに影響を及ぼすと推定される操作因子である①ゼラチン濃度②多孔体の孔サイズと濡れ性③ガス流量と液流量④液温度⑤系圧⑥溶存気体濃度⑦ガス種を変化させて、気泡生成挙動を調査する。特にUFB郡の生成理論については、発明したMB発生技術を用いて乳化剤が吸着したMB郡の溶解収縮に伴う総括物質移動容量係数kLaを算出して、気泡サイズ制御技術を確立する。また、凝集体の大きさと形状に影響を及ぼすと推定される操作因子である⑧出口管の直径と長さ⑨溶存気体濃度⑩pH調整液との混合状態、を変化させてUFB凝集体形成挙動を調査する。MB郡やUFB郡の等電点においてバッチ式の遠心分離機を併用して遠心力とMBやUFBの凝集挙動との関係を調べることで、凝集体の成長速度を粒子濃度の1乗もしくは2乗との比例関係を整理し、せん断凝集とブラウン凝集の寄与の比を明らかにする。Ansys社製流体解析ソフトFluentを用いた流動挙動と圧力分布を解析し、ケルビンーヘルムホルツ理論に基づく既往の旋回流理論と関連づけることで、凝集体サイズ制御技術を確立する。本成果を論文として投稿する。 2023年度は、計上する凍結真空乾燥器によるSEM測定やTEM測定によりコアセルベート内の凝集構造を分析する。高密度UFBコアセルベートの薬剤徐放性能のモデル実験として、ローダミンBの電解質溶液にコアセルベートを入れ、薬剤の吸脱着(徐放)実験をバッチ操作で行う。主な操作因子である①UFBの気泡径分布と個数密度、②コアセルベートサイズ、③薬剤濃度、④ゼータ電位を設定して速度論解析を行う。UFBの気液界面積と飽和吸着量の関係および吸脱着速度定数からUFBによる薬剤徐放メカニズムを明らかにする。本研究全体で得られた成果を論文として投稿するとともに、報告書に取りまとめる。
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Causes of Carryover |
規定より予算がかからなかったので、次年度に充てる予定である。使用計画として、CO2ファインバブルの溶解収縮挙動の解析に必要となる発明したファインバブル発生装置(特注)に25万円、実験器具類一式に10万円、試薬類一式に10万円、およびガス類一式に5万円を計上する。
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