2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K04794
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
鬼塚 正義 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 助教 (80571174)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抗体医薬品 / 動物細胞 / 灌流培養 / 抗体品質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、抗体医薬品生産における長期間の動物細胞培養時に生じる細胞の老化現象と生産抗体の品質の関連性の解明を目的としている。R3年度は小型制御培養システムを使用した灌流培養を実施した。モデル細胞としてIgG1抗体産生CHO細胞(研究室内で開発)を使用した。培養途中で培地の灌流率(培地交換速度)を変更し、長期培養と共に培地中の栄養源がIgG1抗体生産量および抗体品質に与える影響を解析した。 培養中期では1細胞辺りの抗体生産速度が高かったが、培養後期へと移行すると比分泌生産速度が低下した。培養後期ではグルコース消費量や乳酸生成量が低下したことから、細胞代謝活性の低下に伴い比分泌生産速度も低下したと示唆された。培養後期ではFcレセプターへの結合能力が高い抗体が分泌されていた。この結果は抗体N型糖鎖の末端にガラクトースが多く付加された抗体が生産されていたことを示している。一方、培養槽内のグルコース濃度が低下した際には抗体のガラクトース付加割合が低下したことから、細胞内でもグルコース量が減少したことでUDP-グルコース及びガラクトース糖供与体であるUDP-ガラクトース生合成量が低下し、抗体へのガラクトース付加割合が低下した可能性が考えられた。以上の結果から、代謝活性、グルコース濃度、N型糖鎖のガラクトース量の関連性が示唆され、今後、生産量と抗体品質のバランスを考慮した培養パラメーターの確立が必要である。 次に細胞老化や抗体品質に影響を与えうると想定した各酵素について、発現ベクターを調製しCHO細胞一過性発現システムで分泌生産を試みた。培養上清、細胞内において各酵素に相当するバンドが確認された。高発現系の樹立に成功したので、次年度はスケールアップし、タンパク質レベルでのアッセイのために分離精製を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画書に記載した計画書には、4つのサブテーマを3年計画で実施することとした。 R3年度はIgG1抗体産生CHO細胞の灌流培養を実施した。灌流培養は20日以上、継続的に培養状態を維持・管理する必要があるものの、コロナ禍の影響を受け、何度か培養途中で培養実験を断念せざるを得ない状況となった。このため当初、3バッチ以上の灌流培養を予定していたが、2バッチの実験にとどまってしまった。このため進捗状況としては「やや遅れている」との評価とした。 しかしながら、2バッチの灌流培養実験でも遺伝子発現や抗体品質の評価は充分に可能であり抗体品質に関しては既に分析を終えている。研究計画の進捗の点からは大きな支障ではないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はスケールアップさせた灌流培養(1Lスケール培養)を実施し、R3年度に実施した小型制御培養システムを用いた培養との比較を行う。同時に細胞老化と抗体品質との関連性の本質に迫るため、灌流培養中における酵素発現の分析等も織り交ぜて研究推進を行う。 さらにR3年度に樹立した各酵素の高発現系についてスケールアップを行い、タンパク質レベルでの分析を実施するため、培養上清からの分離精製を試みる。
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Research Products
(1 results)