2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K04966
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
重光 亨 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (00432766)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 小水力 / インライン水車 / 二重反転形羽根車 / 性能 / CFD / PTDR |
Outline of Annual Research Achievements |
ピコ水力発電を普及させる上で出力-水車直径比(PTDR)の飛躍的向上は必要不可欠である.本研究では,二重反転形羽根車の高流量域での性能特性に着目し,ピコ水力発電のPTDRの更なる向上を目指す.令和3年度は,二重反転形小型ハイドロタービンの性能と内部流れの関連性を数値流れ解析により解明する. これまでの基礎研究において,二重反転形小型ハイドロタービンは,高流量域においても出力が漸増することを発見した.この性能特性は,ピコ水力発電のPTDRの向上に大きく寄与する可能性があるため,その出力増加メカニズムを解明する必要がある.そこで,令和3年度は二重反転形小型ハイドロタービンが高流量域において,出力が漸増するメカニズムを解明し,出力のピーク流量点を明らかにする. 二重反転形小型ハイドロタービンの数値流れ解析モデルの構築を行い,設計流量(Qd)の1倍,2倍,3倍における定常解析を実施した.その結果,高流量2.0Qdにおける効率の低下は非常に小さいため,出力は設計流量の10倍以上となった.また,設計流量の3倍の流量においても,効率は高水準なまま出力のピークも確認できなかった.そこで,流量を6.0Qdから20Qdまで段階的に増加させ数値流れ解析を実施したが,出力は低下することはなかった.高流量域においても,ある程度の効率を維持でき,出力が増加し続けることは,PTDRの向上に直結するため,想定以上の出力の増加が期待できる. 出力のピークを確認できなかったが,その内部流れに着目するために,1.0Qd,2.0Qd,6.0Qdにおける内部流れの調査を実施した. 3.0Qd,6.0Qdでは,特に後段羽根車入口での流れと入口角とのミスマッチが大きかったが,後段羽根車翼間では,流れは急激に羽根に沿う結果となった.そのため,高流量域での効率低下が抑制され,高い出力が実現したものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二重反転形小型ハイドロタービンの数値流れ解析モデルの構築を行い,設計流量(Qd)の1倍,2倍,3倍における定常解析を実施した.その結果,1.0Qdでは,出力51.69W,効率67.90%となり,2.0Qdの流量では,出力546.03W,効率54.79%が得られ,2.0Qdにおける効率の低下が非常に小さいため,出力は設計流量の10倍以上となった.また,3.0Qdでは,出力1512.84W,効率39.34%が得られ,設計流量の3倍の流量においても,効率は高水準なまま出力のピークも確認できなかった.そこで,流量を6.0Qdから20Qdまで段階的に増加させ数値流れ解析を実施したが,出力は減少することなく,増加し続ける結果となった.高流量域においても,ある程度の効率を維持でき,出力が増加し続けることは,PTDRの向上に直結するため,想定以上の出力の増加が期待できる. 出力のピークを確認できなかったが,内部流れと性能との関係性について明らかにするために,1.0Qd,2.0Qd,6.0Qdにおける内部流れの調査を実施した.内部流れの調査結果から,1.0Qdでは,前段および後段羽根車とも羽根の入口角,出口角に沿って流入,流出していることが確認できた.流量の増加に伴い,前段羽根車入口での流れと入口角とのミスマッチが大きくなるが,前段羽根車の入口から出口まで羽根に沿った比較的良好な流れ場になっていることがわかった.一方,6.0Qdでは,特に後段羽根車入口での流れと入口角とのミスマッチが大きくなった.しかし,後段羽根車翼間では,流れが急激に転向され,羽根に沿った流れとなった.この影響により,高流量域での効率低下が抑制され,高い出力を実現できたものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究実施計画(PTDRの向上と実験による効果検証)高流量時の出力増加メカニズムをもとに,良好な効率を維持しつつ,PTDRを最大限増加させる二重反転形小型ハイドロタービンを新たに設計する.非定常数値流れ解析結果をもとに,羽根車への流入状況,前段と後段羽根車の翼列間における内部流れを考慮した上で,最適な羽根車形状を確立する. 最適な羽根車の外注を行い,実験装置を使用し,詳細な性能特性を明らかにする.ここでは実験においてPTDRが大幅に向上できるか着目する.各流量,回転数時における性能と数値流れ解析より明らかとなった内部流れとの関連性を明らかにし,内部流れの観点からPTDRが向上する要因を確認する. 令和5年度の研究実施計画(圧力変動の抑制、現地フィールドにおける実証試験)PTDRの向上は,出力の大幅な増加を意味し,水車へ流入する流量および羽根車に作用する圧力も大きく増加する.二重反転形羽根車では,二つの羽根車が反転する性質上,それぞれの羽根車の流れ場が干渉し,振動,騒音の増加を招く可能性がある.そこで,最適モデルにおける数値流れ解析結果をもとに,二重反転形羽根車に作用する翼列間干渉の発生メカニズムを解明する.その上で,PTDRを維持しつつ,翼列間干渉に伴う圧力変動を抑制するための羽根枚数,ソリディティ,羽根食違い角を明らかにする. 圧力変動を抑制できる最終モデルの外注を行い,実験装置により性能特性を調査する.さらに,徳島県内に整備予定のフィールドにおける実証試験を実施し,現地フィールドにおいても,PTDRが飛躍的に向上できるか検証を行う.
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Causes of Carryover |
理由:消耗品が3月に納品となり、支払が完了してしないため。 使用計画:消耗品の支払が4月に完了する予定である。
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