2021 Fiscal Year Research-status Report
Study for electronic states of water in high-concentration aqueous electrolytes solutions to demonstrate potential window expansion of mechanism of aqueous electrolyte
Project/Area Number |
21K05013
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
森澤 勇介 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60510021)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 減衰全反射遠紫外分光法 / ハイドレートメルト / 水 / リチウム二次電池 / ナトリウム二次電池 / 水性電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はハイドレートメルト (HM)での電位窓拡張機構の実証のために、電気化学的減衰全反射遠紫外分光法(EC-ATR-FUV)の多角入射測定により高濃度塩水溶液中の水の電子状態の変化を観測し、物性向上機構を解明することが目的である。令和3年度においては、電位窓拡張機構における水の電子状態の解明を目指し、既存のATR-FUV分光法を用いて水の高濃度塩水溶液中における水の電子状態変化の解明を目指した。 リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)とリチウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI)の混合塩と水をLiTFSI : LiBETI:H2O=x:1-x:2.0のモル比(x=1.0~0.7)で混合した水溶液(Li-HM)と、LiBETIをリチウムトリフルオロスルメチルホン酸(LiTFS)に置換した水溶液および、これらリチウム塩単独の水溶液の濃度依存性を既存のATR-FUV分光器で測定した。その結果、水同士の水素結合と水とリチウムイオンの配位結合の割合によって、水の第一遷移エネルギー(HOMO-LUMOギャップに相当する)が高エネルギー側にシフトした。最も高濃度のLi塩溶液となるLi-HM中ではほとんどの水がリチウムと配位して、0.4eV以上大きくシフトすることを、はじめて実証した。これらの成果について3つの国際学会において発表し、1報の雑誌論文発表を行った。また、計画通りMgおよびNa塩についても濃度依存測定を開始した。マグネシウトリフルオロスルメチルホン酸(MgTFS)およびナトリウムトリフルオロスルメチルホン酸(NaTFS)について濃度測定を行った。これらの結果については、第82回分析化学討論会(2022年5月開催)にて口頭発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初令和3年度に計画していた、リチウム塩水溶液中の水のFUVスペクトルについて濃度依存性および、アニオン依存性測定についてまた、Na塩水溶液とMg塩水溶液中の水について1つのアニオンにおける濃度依存性の測定を計画通り行うことができた。さらには、その解析についても大きく進展することができ、当初来年度の計画であった雑誌論文での発表を早め、今年度のうちに発表できたことは当初の計画以上に進展していることとなる。 一方で、本年度に計画していていた電気化学的減衰全反射遠紫外分光法(EC-ATR-FUV)について、近畿大学において完成させる予定であったが、これについてはやや遅れているといえる。原因としては、コロナウィルスの感染拡大に伴い、当初計画をしていた電極作成に対する微細加工がスムーズに進まず、電極を基にした装置の設計が遅れており、完成していないためである。ただし、大阪大学において作成されたEC-ATR-FUVを借りて、Li-HMの測定を行い、結果は得ている。以上のことから総合的に判定して、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に引き続き電位窓拡張機構における水の電子状態の解明をリチウム塩だけでなく、マグネシウム塩、ナトリウム塩へと広げて実施する予定である。本年度は特にこれらのの塩のアニオン依存性測定を行い、リチウム塩の結果と比較する。水の第一電子遷移エネルギーがアルカリ金属塩の配位によって、どのように変化するかは量子化学計算によって予測されているが、この予測が定量的にどれほど正しいのかを検討する。 さらに、令和4年度は令和3年度に遅れていたEC-ATR-FUV分光器の作成を行う。特に電極作成を早急に進め、EC-ATR-FUV分光法によるLi-HMの測定および解析を行う。EC-ATR-FUV分光法により、因加電圧環境における電極界面から約数10nm程度の界面で起こる水の電子状態変化を明らかにする。ATR測定では入射角を変えることで、光と試料の相互作用する領域の深さが変わる。ATR-FUVにおいては、屈折率1.43程度の水溶液で考えると、現有装置で可能な入射角である75°~60°の間に分析深さは20~30 nmと変化する。Pt電極を10 nm蒸着し、20~30nmへ分析深さを変えることで電極からの深さに対する知見を得られると考えられる。
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Causes of Carryover |
物品費については、電極作成に対する微細加工がコロナウィルスの感染拡大によって、相手方とのコミュニケーションがスムーズに進まず、電極を基にした装置の設計が遅れており、令和3年度に計画していた設備備品の購入ができなかったため。令和3年度購入できなかった設備備品を購入計画予定です。
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Research Products
(4 results)