2023 Fiscal Year Research-status Report
水俣湾及び埋立地の環境変動時における底質の化学変化に伴う再水銀汚染に関する検討
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21K05162
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
松山 明人 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 室長 (00393463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 真一郎 九州大学, 工学研究院, 教授 (80274489)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 溶存態総水銀 / 溶存態メチル水銀 / ORP / DO / DOC / 水俣湾底質 / バッチモデル実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
水俣湾海水中の溶存酸素濃度(DO)を1~2、3~4㎎/Lに調整し、バッチモデルによる培養実験を行った。その結果、DOが1~2の場合、ORPの低下にともなって溶存態総水銀濃度の増加及び溶存態メチル水銀濃度の増加が観察された。しかし、その濃度はDOが1㎎/L以下の時と比較して大きく溶存態水銀濃度が低下していた。一方、DOが3~4㎎/Lの場合、溶存態水銀濃度の上昇はほぼみられず、溶存態メチル水銀濃度もほぼ認められない状況となった。従って、底質からの水銀溶出も含め海水中における水銀メチレーションは、反応指標をDOとした場合、2~3mg/Lが反応境界であると思われる。また水俣湾より採取した生海水を用いた培養実験の結果、溶存態水銀のメチル化反応が明確であった培養海水温度はおよそ20℃から23℃の範囲であった。また、塩分濃度では32‰から34‰の濃度範囲であった。さらにバッチモデル実験と同様に、溶存態炭素濃度と溶存態メチル水銀濃度は正の相関が認められた。バッチモデルによる培養実験時において、溶存態メチル水銀が海水中で生成している際の微生物をゲノム解析により同定した結果、硫酸還元菌グループが主要であった。その一方。水銀のメチル化だけでなくメチル水銀の無機化や、二価水銀イオンが元素上水銀に変換される反応に寄与する微生物相も確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海水中の溶存態酸素濃度(DO)の調節方法が確率されたことにより、DO濃度をある程度詳細に調節出来るようになり、DOを指標とした場合における底質から供給される溶存態総水銀のメチル化率を測定できるようになった。また水銀が海水中でメチル化する際における海水の物理特性の変化や、海水中微生物の挙動についてもゲノム解析などを通じて菌種を同定できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で水俣湾底質を用いたバッチモデル実験より、水銀含有底質からの水銀溶出は、海水中のDO濃度、DOC濃度、海水温度等が相互に影響しながら、その溶出濃度が決定されている事がわかった。また溶存態総水銀のメチル化には海水中の微生物活動が深く関与していることもわかった。その一方、本現象は水俣湾独自のものであるのかどうかについては未だ不明である。そこで平成6年度は長崎県・大村湾より水俣湾と同等の粒径組成及び有機物濃度を持つ底質を採取し、この中に黒色硫化水銀を水俣湾と同等程度の水銀濃度になるよう添加混合する。その後、水俣湾底質によるバッチモデルと同じ培養条件を用いて培養実験を行い、その結果を相互に比較することを予定している。
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Causes of Carryover |
今年度開催されるICMGP2024 南アフリカにおいて研究発表を実施するため予算を確保している。さらに今年度は水俣湾以外の海域(長崎県大村湾を予定)より底質を採取し、本底質に黒色硫化水銀を添加混合し、これまで行ってきた培養実験条件と同一条件で培養実験を行い黒色硫化水銀の可溶化反応について確認する予定である。
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Research Products
(1 results)