2022 Fiscal Year Research-status Report
河口湖湖底堆積物中における未培養二トロスピラ門磁性細菌の培養に向けた培地検討
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21K05370
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
下重 裕一 東洋大学, バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター, 研究助手 (40622676)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 磁性細菌 / ニトロスピラ門 / マグネトソーム / マグネタイト / 磁性ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、前年度に続き採取した湖底表層堆積物中における未培養ニトロスピラ門磁性細菌(以下、本菌と略す)の生育の有無を光学顕微鏡下で定期的に確認した。令和3年3月6日に湖底表層堆積物約500 mLと湖水約1,500 mLを2 Lプラスチック容器6本にそれぞれ採取し、室温(21-25℃)および暗所で約1年8カ月培養を行った結果、全サンプルにおいて本菌と形態的特徴が類似した磁性細菌の生育が確認できた。当該堆積物中から磁気的に濃縮させた磁性細菌の透過型電子顕微鏡観察を行った結果、菌体の細胞内に生合成された磁性ナノ粒子の形状、数および配置がニトロスピラ門に属する磁性細菌の特徴と一致した。また、16S rDNA配列に基づくアンプリコンシーケンスによる菌叢解析結果から、未培養ニトロスピラ門磁性細菌MWB-1株と最も近縁なOTUが検出できたことから、本菌がニトロスピラ門に属する磁性細菌であることを確認できた。しかしながら、本菌以外にもプロテオバクテリア門マグネトコッカス目に属する磁性細菌の存在も確認され、本菌とマグネトコッカス目磁性細菌の存在割合はそれぞれ2.1%および97.9%だった。本菌の存在割合が非常に低かったため、本年度実施予定だったRNA-seq解析等に必要な菌体収量が取得できなかった。そのため、次年度の研究計画だった各サンプルの堆積物中における本菌の深度別の菌数および溶存酸素濃度測定を実施し、本菌の生息環境の分析を行った。その結果、6サンプル中4サンプルの堆積物中の微好気-嫌気的環境(深度-0.5 cm)と嫌気的環境(深度-1.5から-2.5 cm)において他の深度よりも本菌が同時に多く検出された。本菌の堆積物中の生息分布は、ニトロスピラ門に属する磁性細菌の生態的特徴の一つである可能性が高いため、培養を行う上での重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度は、前年度に続き採取した湖底表層堆積物中における未培養ニトロスピラ門磁性細菌(以下、本菌と略す)の生育の有無を確認し、令和3年3月6日に採取した湖底表層堆積物中において本菌の生育を確認することができた。しかしながら、本菌以外にもプロテオバクテリア門マグネトコッカス目に属する磁性細菌の生育が確認され、また本菌の存在割合が非常に低かったため、当該研究計画に基づいたRNA-seq解析等は実施することができなかった。一方、生息環境の分析により明らかとなった堆積物中における深度別の本菌の生息分布および溶存酸素濃度プロファイルは、培養条件を検討する上で重要な知見となり得た。そのため進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、前年度に続き採取した湖底表層堆積物中における未培養ニトロスピラ門磁性細菌(以下、本菌と略す)の生育の有無を確認し、透過型電子顕微鏡観察および16S rDNA配列に基づくアンプリコンシーケンスによる菌叢解析から本菌の存在割合を確認する。RNA-seq解析等に必要な菌体収量が取得できた場合においては、当該解析等を実施して実際に環境中で発現している代謝関連遺伝子から培養に必要な栄養素の推定を行い、培養を試みる。またRNA-seq解析等が実施できない場合においても、本菌の生息環境の主要溶存無機成分の濃度測定を行い、培養に必要な無機成分を推定して培養を試みる。
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Causes of Carryover |
令和4年度は、前年度と異なり未培養ニトロスピラ門磁性細菌(以下、本菌と略す)の生育を確認することができた。しかしながら、当該研究計画に基づいたRNA-seq解析等に必要な本菌の菌体収量が取得できなかったため、解析費用の執行が少なく、次年度使用額が生じた。令和5年度は、RNA-seq解析等に必要な本菌の菌体収量が取得できた場合、当該解析等を実施予定であるため、解析費用等として使用する計画である。
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