2023 Fiscal Year Annual Research Report
清酒醸造における低温長期の並行複発酵を可能とする、緩慢な糖生成のメカニズムの解明
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21K05460
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
徳岡 昌文 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (30442544)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オリゴ糖 / 清酒 / 発酵 / 糖化 / 糖転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに清酒中オリゴ糖の構造的特徴を明らかにし、糖転移と澱粉分解の両者でオリゴ糖が生成すること部分的に明らかにした。本年度はこれらオリゴ糖の醪中での消長を詳細に調べることで、緩慢な糖生成との関連を調べた。 総米5kgで清酒を仕込み、未同定を含む28種の清酒中オリゴ糖について留後18日目までの経時変化及び阻害剤添加による影響を調べたところ、変化のパターンから、①3糖以下のオリゴ糖、②イソマルト―ス型分岐を含むオリゴ糖、③マルトースとマルトトリオース及び未同定オリゴ糖、④α-限界デキストリン構造のオリゴ糖、の4種に大別された。どのオリゴ糖も醪末期において漸減したことから、醪末期におけるグルコース供給に寄与していると考えられた。マルトースとマルトトリオースは醪の固形部からタカアミラーゼにより醪期間を通じて生成し、α-グルコシダーゼで速やかに分解されることが示唆された。醪中のアルコールとグルコースの濃度変化から、留後15日目から24時間での生成グルコースは1.02%と算出され、阻害剤添加試験と添加回収試験から求めたマルトースとマルトトリオースに由来するグルコース0.39%を除くと、0.63%分のグルコースが分岐を含むオリゴ糖を介して生成していると推定された。以上より、清酒醪後半の緩慢な糖生成に、分岐を含むオリゴ糖が一定の寄与をしていることが示唆された。しかしLC/MSによる個別の正確な定量は標品が無いために困難であり、寄与する分子種までは特定できなかった。 その他、醪ろ液及び安定同位体13Cラベルしたマルトースを基質とした糖転移試験から、清酒醪中オリゴ糖の生成を確認したほか、DP6-1がAgdAでは分解されずAgdBで分解されることを見出した。また、清酒中より新規の配糖体として糖アルコールの配糖体を発見したほか、清酒中のオリゴ糖が清酒の香気を抑制する可能性があることを発見した。
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