2021 Fiscal Year Research-status Report
イネを用いた長期栄養繁殖が成長やゲノムに及ぼす影響の解析と作物生産性向上への展開
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21K05521
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
高橋 実鈴 (野坂実鈴) 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 助教 (20738091)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 栄養繁殖 / 多年生 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
茎頂分裂組織における持続的な器官分化は植物体地上部の永続的な成長を支える源である。長期間、器官分化を続けた茎頂分裂組織において、茎頂分裂組織の機能は維持されているのか、あるいは時間の経過とともにその機能は変化しているのか。本研究はイネを多年生植物のモデルとして利用し、栄養繁殖により長年維持している個体と種子から発芽した1年目の通常個体の茎頂分裂組織の機能を比較することで、茎頂分裂組織の永続性や老化の仕組みを理解することを目指す。 2021年度は長期栄養繁殖がイネの成長・収量に及ぼす影響を明らかにするため、多年生の性質を示す栽培イネの栄養繁殖個体と種子から発芽した1年目の通常個体の成長を比較した。これまでの研究により栄養繁殖個体では通常個体と比べて、個体間で草丈にばらつきがあり、草丈の低い個体の割合が高かったため、「栄養繁殖個体では栄養繁殖を繰り返すと成長抑制の度合いが増加する」という仮説を立て、その検証を行った。その結果、草丈の高い栄養繁殖個体の後代では草丈の高いものから低いものまでばらつきが見られたが、草丈の低い栄養繁殖個体の後代では草丈の低い個体のみ観察された。よって栄養繁殖個体の成長抑制には下限があり、成長が抑制される度合いは個体により異なることが明らかになった。また栄養繁殖を繰り返しても成長が抑制されない個体も出現することから、栄養繁殖の繰り返しにより成長抑制の度合いが必ずしも増加しないことが明らかになった。 当初の計画に加えて、2021年度は栄養繁殖個体の成長が抑制される及び抑制されない生育条件を見出したため、この条件を用いて今後の研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた多年生を示す栽培イネ系統における長期栄養繁殖がイネの成長に及ぼす影響についての解析に加えて、栄養繁殖個体の成長が抑制される生育条件を見出すことができたため。 本年度の実験結果から育苗条件によって草丈の低い栄養繁殖個体の後代は低い草丈を維持することが明らかになったため、今後、成長が抑制された栄養繁殖個体とその個体に実った種子由来の個体のゲノムのDNAメチル化領域を比較することで、成長が抑制された栄養繁殖個体で特異的なDNAメチル化領域を検出できると考えている。 また2022年度に行う計画であった、栄養繁殖個体と種子由来の通常個体の茎頂分裂組織における遺伝子発現の比較実験を一部先行して実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は当初の計画通り、栄養繁殖個体で見られた成長抑制の原因及び仕組みの探索を行う。栄養繁殖個体と種子由来の通常個体の茎頂分裂組織における遺伝子発現を比較し、成長抑制に関与する遺伝子群の探索を行う。 また2022年度は長期栄養繁殖がイネゲノムに及ぼす影響の解析のうち、長期栄養繁殖がイネゲノムのエピジェネティック修飾に及ぼす影響の解析を先行して進める。
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Research Products
(1 results)