2023 Fiscal Year Annual Research Report
Conservation study of the marine invertebrate brittle star, Ophiothela danae, based on museum specimen DNA
Project/Area Number |
21K05632
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
岡西 政典 広島修道大学, 人間環境学部, 助教 (70639278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 敏彦 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 部長 (70222263)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 系統 / 分類 / 進化 / 集団遺伝 / 海産無脊椎動物 / MIG seq / 古標本 / クモヒトデ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に伴うMIG seq解析による集団遺伝学的研究の成果として,1975~2021年にかけて日本各地(三崎,鳥羽,白浜,串本,防津,八丈島,小笠原諸島)と東南アジア(タイ,ベトナム)より収集された313個体のニシキクモヒトデの標本について,一塩基情報の獲得とその遺伝構造の解析に成功した. 解析した標本のうち,エタノールで保存した標本とホルマリンで保存した標本とでは,エタノール保存の標本から得られている「リード数」と「共通して得られている一塩基多型」の数が,ホルマリン保存の標本から得られているそれらよりも多いことが認められた.さらに各保存方法において,年代が新しい方が「リード数」と「一塩基多型」の数が多いことが認められた.このことは,エタノール保存で,かつ新しい標本の遺伝子の保存率が高いことを示している.ただし,半世紀近く昔の海産無脊椎動物の古い標本(古標本)からの一塩基情報の獲得は前例がほとんど無く,MIG seqが,博物館標本の解析において優れた手法であることが認められた. また日本と東南アジアの個体の解析結果から,解析個体の生息経度と緯度が大きくなる(より北東に分布する)ほど,対立遺伝子頻度が上昇し,遺伝的多様度が高くなる傾向が見られた.生物の,分布の中心ほど遺伝的多様性が高く,縁ほど低いという中心辺縁仮説に基づけば,ニシキクモヒトデの分布の中心は温帯域であることが示された. 本研究により,博物館に所蔵されているクモヒトデの標本からMIg seq解析が可能であり,そこから集団遺伝構造解析が可能であることが示された.今後,さらに分布域が後半なクモヒトデ類の標本を用いることで,海洋における生物の進化史を,従来よりも詳細かつ広範に明らかにできると期待できる.
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