2021 Fiscal Year Research-status Report
隠蔽種が明らかとなった特別天然記念物アホウドリの生殖隔離に関連する行動学的研究
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21K05641
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Research Institution | Yamashina Institute for Ornithology |
Principal Investigator |
富田 直樹 公益財団法人山階鳥類研究所, その他部局等, 研究員 (90619917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 准教授 (60452546)
出口 智広 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 准教授 (60414091)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アホウドリ / 鳥島 / 尖閣 / 保全単位 / 非繁殖期 / 繁殖タイミング |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥島の繁殖地におけるアホウドリの飛来状況や抱卵状況をモニタリングするため,2021年2~3月に初寝崎(7台),燕崎(2台),子持山(3台)の3ヶ所の繁殖地に設置した自動撮影カメラ計12台(06:00~18:00の毎正時に1枚撮影するように設定)を2022年2~3月に回収した.主な繁殖地の初寝崎と燕崎のカメラは,回収直前まで撮影を続けており,2021-2022年期のアホウドリが鳥島へ帰島し始めの時期から記録できていた.一方,子持山のカメラは,鳥島を通過した台風16号が火山礫を巻き上げ,カメラレンズを損傷させたため,2021年9月30日までの撮影となった.この他に,鳥島タイプと尖閣タイプの繁殖地への到着時期(繁殖タイミング)を調べるため,初寝崎に鳥島タイプ3巣と尖閣タイプ1巣が撮影できる場所にカメラ1台を設置し,2021-2022年の繁殖期における各タイプの鳥島への到着時期を調べた.その結果,2021年10月13日に尖閣タイプの巣のオスが,続いて同巣のメスが10月18日にそれぞれ初帰島した.一方,鳥島タイプの巣では10月16日にオスが,10月23日にメスがそれぞれ初帰島し,タイプ間で帰島日に3~7日間の違いが確認された.また,2022-2023年の繁殖状況をモニタリングするため,2022年2~3月に上記と同様の場所に自動撮影カメラを設置した. 両タイプの交尾前隔離に影響し,遺伝的交流を妨げる要因の一つと考えられる各タイプの異なる非繁殖期の利用海域が,先天的に決まっているかどうかを検討するため,鳥島から小笠原諸島に移送された雛のタイプを遺伝子解析(ミトコンドリアDNA・制御領域2)で特定した.この結果,小笠原諸島に移送された雛の中に尖閣タイプの雛が含まれることが明らかとなった.これにより既に得られている非繁殖期の利用海域との関係を明らかにすることが可能となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アホウドリの繁殖状況を記録するカメラの機種選定に際しては,年に一度のメンテナンスしかできないことを考慮し,風雨や砂塵に強く,十分なバッテリー寿命を確保できる機種を選定したため,主な繁殖地の状況を把握することができた. また,足環標識の無いアホウドリを捕獲し,衛星追跡型GPSロガーを装着することで,尖閣諸島で繁殖するアホウドリの1年を通じた移動や利用海域,繁殖タイミングを明らかにすることを目的として,青森県尻屋崎の東側海上において,アホウドリの捕獲調査を行った.3日間の調査において,アホウドリは延べ6羽確認され,この内,延べ4羽に足環標識が付いておらず,尖閣諸島から飛来した個体と推測された.しかし,これまでの調査と比べて確認できた個体数は少なく,アホウドリは捕獲できなかった.この理由として,2021年度の当該海域の高い海水温がアホウドリ類の分布に影響した可能性が考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き2021-2022年期のアホウドリの繁殖状況を解析し,鳥島タイプと尖閣タイプの繁殖タイミングの違いの有無を検証する.2023年2~3月に回収予定のカメラは,広角のものを新規導入しており,両タイプの観察巣を増やして解析する予定である.遺伝子解析でタイプの明らかとなった小笠原諸島の移送雛について,これまでに得られた位置データを対応させ,非繁殖期の利用海域との関係を明らかにする.足環標識の無いアホウドリを洋上で捕獲し,衛星追跡型GPSロガーを装着するために,昨年度の青森県尻屋崎沖の他に同アホウドリの観察報告のある別の海域も加えて調査を行う予定である.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の拡大により,予定していた対面の打ち合わせと,計画したサンプル数のすべての遺伝子解析を実施できなかったため. 翌年度はコロナウイルス感染症の状況を見ながら対面による打ち合わせを実施し,残したサンプルの遺伝子解析を翌年度に予定している分と合わせて実施する予定である.
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Research Products
(2 results)