2023 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of Cell Walls of Trees at Subzero Temperatures
Project/Area Number |
21K05699
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒川 圭太 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (00241381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重冨 顕吾 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
鈴木 伸吾 北海道大学, 歯学研究院, 技術職員 (70847839)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 樹木 / 細胞壁 / 氷核活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞内の水が凍結すると、氷晶成長によって膜構造が損傷するため、細胞は致死的な傷害を被ることが知られている。そのため、越冬する植物細胞では、容易に細胞内の水が凍結しない仕組みが存在する。通常、多く草本植物の柔細胞や木本植物の樹皮の柔細胞などは、気温の低下にともなって細胞外の水の凍結が始まり、それによって形成される細胞内外での蒸気圧差に応じて、細胞内から細胞外へ向けて水が移動する。そのため、細胞外の水が凍結(細胞外凍結)した細胞では、凍結による脱水を生じる(凍結脱水)。この凍結脱水では、気温の低下に応じて脱水の厳しさが増すが、寒冷地の樹木の樹皮柔細胞などは凍結抵抗性に優れているため、厳しい凍結脱水にも耐えうるものも多く存在する。このような氷点下温度における植物細胞の応答性は、細胞外での水の凍結から始まる生理現象といえる。 本研究では細胞外で水が凍結する仕組みについて注目し、水の凍結を促す活性(氷核活性)が細胞壁画分から検出されたという予備実験の結果をもとに一連の研究を開始した。その結果、細胞壁を構成する一部の多糖類が有する氷核活性によって凍結が起こりうる可能性を示唆した。すなわち、カツラ樹皮の細胞壁画分から抽出された成分から検出された氷核活性に注目し、その活性成分の単離を試み、その構造や機能を解析することによって、細胞壁を構成する多糖類の1種であることが示唆された。これまで細胞壁多糖が植物由来の氷核活性成分と示唆された研究例は少ない。また、細胞外凍結する柔細胞が多く存在する樹皮組織の細胞壁画分から氷核活性が検出されているため、土壌微粒子や氷核細菌のような環境由来(外部)の氷核活性のみならず、樹皮の細胞壁画分にも凍結開始を促すようなメカニズムが存在しうると考えることも可能である。そのため、樹木細胞の越冬機構について細胞壁に注目して解析することは非常に興味深いものといえる。
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Research Products
(4 results)