2023 Fiscal Year Research-status Report
うつ病態におけるプリン動態変化とアストロサイト-ニューロン機能連関の役割の解明
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21K05950
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
乙黒 兼一 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (40344494)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | うつ病 / コルチコステロン / プリン代謝酵素 / アストロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ストレスホルモンであるコルチコステロンの慢性投与によるストレスモデルマウスでの行動異常とその分子メカニズムの検討を行った。コルチコステロンを4週間飲水投与し、オープンフィールド試験、強制水泳試験、高架式十字迷路試験を行ったところ、うつ様行動の誘発が観察された。行動試験後に海馬、大脳皮質、脊髄を採材し、プリン代謝酵素の発現変化を検討すると、うつ病との関連が示されているプリン代謝酵素のmRNA発現が減少していた。一方、培養アストロサイトにコルチコステロンを処置すると、コルチコステロン濃度依存性にその発現は上昇した。また、そのプリン代謝酵素発現は、コルチコステロン処置直後(20分以内)に一過性に上昇し、その後はコントロールレベルまですぐに減少していた。In vivoとin vitroでの反応の差について、今後さらに検討を進める必要がある。 また、うつ病態と関連が示唆されるアストロサイトの形態変化について検討した。α2受容体作動薬デクスメデトミジンをマウスに投与すると、アストロサイト突起が退縮した。この時、アストロサイト突起の一部であるエンドフィートに局在するアクアポリン4発現は変化していなかった。このことから、血管周囲に伸ばしたエンドフィートはアストロサイトの他の突起とは異なる制御を受けていると考えられる。また、デクスメデトミジンによる形態変化は、部分的にα2拮抗薬アチパメゾールで回復したことから、この反応にはα2受容体が関与していると考えらえるが、全ての反応が抑制されなかったことから、他の受容体の関与が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数のうつ病モデルを用いて、プリン代謝酵素の発現が変化することを明らかにした。また、確立したアストロサイト形態の評価系によって、α2作動薬による形態変化の詳細を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
うつ病モデルで観察されたプリン代謝酵素発現の変化について、コルチコステロン投与後の詳細な経時的変化を検討し、培養細胞での反応との差異を明らかにする。また、抗うつ薬投与による行動異常とプリン代謝酵素発現の変化を比較検討し、その因果関係を明らかにする。さらに、アストロサイト形態変化に関与する受容体及び細胞内分子経路を薬理学的手法を用いて明らかにする計画である。
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Causes of Carryover |
本年度に投稿した論文について、追加のデータが必要となったため。また、予想外の知見が得られたことから(in vivoとin vitro結果の違い)、さらなる検討が必要となった。
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