2021 Fiscal Year Research-status Report
基部陸上植物の精子走化性におけるカルシウム輸送体の役割
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21K06237
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
大和 勝幸 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (50293915)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コケ植物 / 精子走化性 / カルシウム / 輸送体 / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではゼニゴケをモデルとして、植物における精子走化性の理解を目指している。これまでの研究でゼニゴケの精子走化性においてCa2+の関与が強く示唆されている。そこで、Ca2+チャネルのホモログMpVICSPER1 (voltage-gated ion channel of sperm 1)、Ca2+トランスポーターのホモログMpPMCA (Plasma Membrane Ca2+-ATPase) およびCa2+結合ドメインであるEF-Handを有するMpCAPS (Ca2+-dependent activator protein for secretion) 遺伝子に注目して解析を実施している。 MpVICSPER1の機能的性格付けを目的として動物細胞での発現・解析を計画しているが、まだコンストラクト作成の段階にある。 MpPMCAの精子走化性への関与を調べるために、ゲノム編集によって遺伝子を破壊し、その表現型を観察した。機能欠損変異体において葉状体および生殖器、精子の形態に明らかな異常は認められなかった。しかし、変異体精子の遊泳速度は低下し、造卵器への明確な誘引も観察されなかった。しかし、野生株よりやや少ない傾向が観察されたものの、変異体精子により胞子のうが形成された。 同様に、MpCAPSについてもゲノム編集によって機能欠損変異株を作成・観察した。変異体精子は野生株精子と同等の速さで遊泳していたが、最終的な移動距離は顕著に減少していた。しかし、造卵器への誘引を示し、受精によって胞子も形成された。 以上の結果より、MpCAPSおよびMpPMCAは精子の正常な遊泳に必要とされるものの、精子走化性および受精には必須ではないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、Ca2+の輸送能あるいは結合能を有すると推定されるタンパク質遺伝子であるMpVICSPER1、MpPMCAおよびMpCAPSについて解析を進めている。MpVICSPER1については、動物細胞発現用コンストラクトの作成がCOVID-19の影響もあって大幅に遅延している。一方、MpPMCAおよびMpCAPSについては当初の計画通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
MpVICSPER1の動物細胞発現用コンストラクトを早急に完成させ、本年度中に実験を開始する。また、ヒメツリガネゴケにもオーソログPpVICSPER1が存在し、その変異体が得られているので、その機能解析も実施する。 MpPMCAおよびMpCAPSについては、それらの変異体精子の遊泳に異常が見られたため、その挙動(遊泳軌跡、鞭毛運動)を解析し、野生株との比較を行う。 上記3遺伝子の変異体について、1) 蛍光タンパク質遺伝子を融合した遺伝子による機能的相補でタンパク質の細胞内局在解析、2) 動物細胞での発現による機能解析、3) 鞭毛軸糸の構造の電子顕微鏡解析、を実施する。 MpPMCAおよびMpCAPSについては精子走化性に必須ではないことが判明したため、新奇精子走化性関連遺伝子の探索を実施する。すでに6遺伝子を候補として解析を開始している。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会等がオンライン開催となったため。次年度には学会、研究打合せに使用する予定である。
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Research Products
(3 results)