2023 Fiscal Year Annual Research Report
体表ナノ構造は水中で接着力・摩擦力を低減するか?:生物模倣材料を用いた検証
Project/Area Number |
21K06252
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
広瀬 裕一 琉球大学, 理学部, 教授 (30241772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 大輔 北見工業大学, 工学部, 准教授 (10534232)
上杉 薫 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (20737027)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノ構造 / 水棲生物 / 表面物性 / バイオミメティクス / 生物汚損 |
Outline of Annual Research Achievements |
高さ100 nm前後の乳頭状突起のアレイ構造であるニップルアレイは様々な動物の体表に認められる多機能構造と考えられている。本研究は生物体表のナノ構造の水中における機能を検証することを目的として、合成材料を利用した水中における表面物性の実測を通してナノ構造の機能性を明らかにすることを目指す。 2023年度は、表面摩擦力の計測を目的に二軸微小センサの開発を進めた。現時点で大気中・水中の両方でニップルアレイ上の摩擦力計測に成功している。また、二光束干渉を利用してナノファブリケーションした高さ120, 200, 400 nmの褶曲構造に対して、ホヤ幼生の付着基質選択アッセイを行い、120 nm構造に対してホヤ幼生が負の選択性を示す傾向を明らかにした。この結果は、体表ナノ構造が生物汚損を低減する可能性を示すだけではなく、100 nm前後というサイズに機能的な意味があることも示唆している。さらに、ウミウシ32種の体表粘液の屈折率と吸収スペクトルを計測し、いずれの種でも粘液層の屈折率が海水に近似していることから粘液層が光反射を低減している可能性を示した。一部の種では、紫外線防御にも機能している可能性がある。この粘液の光学特性については論文発表を行なっている(Takano and Hirose, 2024)。 研究期間を通して、ナノサイズのニップルアレイと平滑面の物性の比較から、ナノ構造が表面吸着力・接着力が低減された「汚れにくい表面」を構成している可能性が示された。さらに「滑りやすい表面」である可能性については、二軸微小センサによる計測で検証を進めている段階である。本研究の成果は生物模倣材料としてナノ構造の社会的利用を検討する基礎情報となるだろう。また、粘液層が体表に機能的な物性を付与する構造として重要である可能性を提示している。
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Research Products
(6 results)