2021 Fiscal Year Research-status Report
都市空間を利用するキタキツネの生態遺伝学的特徴とエキノコックス伝播要因の解明
Project/Area Number |
21K06343
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
天池 庸介 北海道大学, 理学研究院, 博士研究員 (20825377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 隆一 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80192748)
佐々木 瑞希 旭川医科大学, 医学部, 助教 (00632126)
中尾 稔 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70155670)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キタキツネ / 野ネズミ / エキノコックス / 都市生態 / 集団遺伝 / 公衆衛生 / 非侵襲的遺伝サンプル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、北海道旭川市を主な調査地とし、①キタキツネ(以下、キツネ)の糞便調査、②キツネの生体調査、③野ネズミ調査を実施した。当該地域におけるキツネとエキノコックスに関する基本的情報が不足していることから、まずは分布情報や感染状況の把握に努めた。キツネ糞便調査(①)では、都市公園、河川敷および郊外の山林等にて、キツネの標本採集調査を実施し、各地点から糞を採集した。また、冬期の積雪時には、糞と同じく非侵襲的遺伝サンプルである尿や毛のサンプルも採取し、同様に遺伝子型決定が可能であることを確認した。今年度採集したサンプルは、309個(尿や毛も含む)である。昨年度の予備調査時に採集したサンプル86個(尿や毛も含む)とあわせると、合計395個となり、その個数は集団遺伝解析を行う上で十分な数と考えられる。糞の種判定の結果、高頻度でキツネに特異的なDNAが検出され、札幌市の都市ギツネと同様に、中心部を含む市街地の広範囲にキツネが分布していることが確認された。さらに、集団遺伝構造解析の結果、旭川集団は複数の遺伝集団に分けられ、それらは混在していることが明らかとなった。また、糞由来DNAを用いたエキノコックス検査を行ったところ、一部のサンプルでエキノコックスのDNAが検出され、市内におけるキツネのエキノコックス感染も確認された。キツネの生体調査(②)では、自動撮影カメラを用いてキツネの出没状況を調査したところ、予備調査時と同様に市内の都市公園においてキツネの定着を確認した。野ネズミ調査(③)では、市内の都市公園において、春から晩秋まで捕獲調査を行い、野ネズミのエキノコックス感染を検査したところ、春には感染は確認されなかったが、初夏に感染が確認され、その後秋にかけて感染率が増加するといった感染率の季節性が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
キツネの糞便調査(①)に関しては、当初最終的な目標サンプル数を最低300個(尿や毛も含む)と設定しており、1年目にしてその目標を達成している点においては非常に進んでいると言ってよい。糞の種判別およびキツネのエキノコックス検査も並行して進めている。一方で、糞の個体識別については、先述の二つの検査に比べて時間を要することに加え、予想以上のペースでサンプルが集まっていることもあり、分析が採集に追いついていない。キツネの生体調査(②)に関しては、自動撮影カメラを用いたキツネの生態観察を予備調査から継続して行っている。また、GPS首輪を用いた行動調査については、都市部で利用可能かどうかを確認する首輪非装着の予備試験を実施し、その有効性を確認した。その後、実際にキツネに首輪を装着する本試験を実施する予定であったが、年度内にキツネを捕獲できなかったため、次年度に計画を持ち越した。野ネズミ調査(③)に関しては、都市公園における定期的な捕獲調査を実施し、予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も引き続き、旭川市を主な調査地とし、キツネおよび野ネズミに関する各調査を実施する。キツネの糞便調査(①)に関しては、今年度採集した場所に加え、まだ採集を行っていない場所についても追加的に調査を実施し、さらなるサンプルコレクションの充実化を図る。標本採集、糞の種判別およびキツネのエキノコックス検査に並行して、個体識別作業を推進し、決定された遺伝子型から詳細な集団遺伝構造や分散パターンを推定する。都市部におけるキツネの環境利用を明らかにするために、採集されたキツネ糞を用いて新たに食性分析を行う。キツネの生体調査(②)については、自動撮影カメラ調査を継続するとともに、都市ギツネの行動生態の解明を目的として、引き続き、キツネの捕獲およびGPS首輪を用いた行動追跡を試みる。野ネズミ調査(③)に関しては、調査範囲を拡大し、都市公園だけでなく、郊外の緑地においても捕獲調査を実施し、広域のエキノコックス感染状況を把握するとともに、影響する環境要因についても検討する。その他、旭川以外の都市ギツネについても、地域性を比較検討する目的から、調査研究の可能性を模索していく。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していたGPS首輪を用いたキツネの行動調査が次年度に延期されたため、次年度使用額が発生した。
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Research Products
(8 results)