2021 Fiscal Year Research-status Report
アストロサイトの細胞間接着分子による神経回路の維持と破綻の制御機構
Project/Area Number |
21K06410
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮田 宗明 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (90582007)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞間接着分子 / アストロサイト / 神経細胞 / 三者間シナプス / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内のアストロサイトは多数の細かい突起を有し、その突起を介してシナプスの構造や機能に重要な役割を果たしているが、アストロサイト突起とシナプスとの接着については生体内に近い形態を示すアストロサイトの培養法が確立されていなかったため、ほとんど解明されていなかった。研究代表者は、生体内で観察される多数の細かい突起を持ったアストロサイトと神経細胞の共培養系を新たに開発し、興奮性神経細胞に形成される興奮性三者間シナプスの形成・維持における細胞間接着分子の役割を明らかにしてきた。本研究ではアストロサイト-神経細胞共培養系と遺伝子欠損マウスを用いて、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞に形成される抑制性三者間シナプスの形成・維持の制御機構を明らかにするとともに、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞がどのようにバランスを取って神経回路を制御しているかを明らかにすることを目的にしている。令和3年度は、アストロサイト-神経細胞共培養系を用いて興奮性神経細胞と抑制性神経細胞に形成される抑制性三者間シナプスにおいて、アストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子の同定と機能分子の局在を解析した。さらに、これらの細胞間接着分子を欠損したマウス由来のアストロサイト、または神経細胞を用いたアストロサイト-神経細胞共培養系において、これらの細胞間接着分子が果たす役割について解析を行い、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞に形成される抑制性三者間シナプスの形成・維持と神経細胞の生存における役割が明らかになりつつある。また、これらの細胞間接着分子を欠損したマウス海馬におけるシナプスの変化、機能分子の局在、神経細胞死の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、アストロサイト-神経細胞共培養系を用いて、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞に形成される抑制性三者間シナプスにおけるアストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子の同定と機能分子の局在を解析した。さらに、これらの細胞間接着分子を欠損したマウス由来のアストロサイトを用いたアストロサイト-神経細胞共培養系を用いて、機能分子の局在を解析し、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞に形成される抑制性三者間シナプスにおけるアストロサイト突起の細胞間接着分子の役割が明らかになりつつある。一方、これらの細胞間接着分子を欠損したマウス由来の神経細胞を用いた単培養およびアストロサイト-神経細胞共培養系を用いて、神経細胞の生存における細胞間接着分子の役割も明らかになりつつある。また、これらの細胞間接着分子を欠損した若齢および加齢したマウスの海馬におけるシナプスの変化、機能分子の局在、神経細胞死の解析を行い、加齢に伴うシナプスの変性と神経細胞死においてこれらの細胞間接着分子が重要であることが明らかになりつつある。本研究によって興奮性神経細胞と抑制性神経細胞に形成される抑制性三者間シナプスの形成・維持と破綻の制御機構の一端の解明につながることが期待され、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度に引き続きアストロサイト-神経細胞共培養系を用いて、アストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子が興奮性神経細胞と抑制性神経細胞に形成される抑制性三者間シナプスにおいて果たす役割を解析するとともに、高解像度顕微鏡と電子顕微鏡を用いてこれらの細胞間接着分子の詳細な局在部位を明らかにする(電子顕微鏡を用いた解析は東京大学大学院医学系研究科 岡部繁男教授との共同研究)。機能的な解析として、抑制性神経細胞における細胞間接着分子の役割を電気生理学的に解析する(大阪医科薬科大学 栗生俊彦博士との共同研究)。また、これらの細胞間接着分子を欠損したマウス海馬を様々な週齢において解析し、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞がどのようにバランスを取って神経回路を制御しているかを解析する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、研究代表者が開発したアストロサイト-神経細胞共培養系と、すでに樹立、繁殖させて準備が整っていた遺伝子欠損マウスを用いて解析を行ったため、当初の計画より使用額が抑えられた。 次年度は、前年度に引き続きアストロサイト-神経細胞共培養系を用いて、アストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子が興奮性神経細胞と抑制性神経細胞に形成される抑制性三者間シナプスにおいて果たす役割を解析するとともに、前年度に解析した以外の遺伝子欠損マウスと抑制性神経細胞特異的に遺伝子欠損したマウスを繁殖し、様々な週齢において解析を行う。また、高解像度顕微鏡と電子顕微鏡を用いて同定された細胞間接着分子の詳細な局在部位の解析(電子顕微鏡を用いた解析は東京大学大学院医学系研究科 岡部繁男教授との共同研究)や、電気生理学的解析(大阪医科薬科大学 栗生俊彦博士との共同研究)を予定しており、当初の計画より使用額が必要と見込まれた。
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