2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of mechanisms underlying lifestyle-related diseases and malignant tumors based on in vivo imaging of scavenger receptors
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21K06502
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
河嶋 秀和 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (70359438)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スカベンジャー受容体 / in vivo イメージング / SPECT/CT / CD36 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体スカベンジャー受容体機能の破綻は代謝性疾患を始めとする様々な疾患の要因になると考えられている。そこで本研究では、in vivoイメージング手法(SPECT/CT)の活用による生理的・病的個体におけるスカベンジャー受容体発現の定量解析を通じ、関連疾患の診断・予防へと結び付けることを目的とした。令和3年度は、研究代表者がこれまでに報告してきた酸化LDLの放射性ヨウ素標識体(125I-oxLDL)を作製し、動物を用いた追実験を実施した。 まず、I-125を含む水溶液から作製したファントムにつきSPECT撮像を試みたところ、10 kBqの低放射能でも明瞭な画像化に成功した。そこで、125I-oxLDLをC57BL/6マウスに尾静脈内投与し、投与10分後に灌流固定した個体についてSPECT/CT撮像した結果、所期の通り褐色脂肪組織(BAT)への放射能集積を描出できた。一方、この放射能集積はMedetomidine,Midazolam,Butorphanol三種混合麻酔薬の前処置により消失した。BATではスカベンジャー受容体の一種であるCD36タンパクの発現が知られているため、125I-oxLDL投与後に摘出したBATから凍結薄切標本を作製し、その放射能集積とCD36発現との関係をラジオルミノグラフィーおよび免疫組織化学染色で確認した。BATに集積した切片単位面積あたりの放射能は白色脂肪組織と比較して2.5倍高く、これと矛盾しないCD36タンパクの発現が観察された。 さらに、CD36による心筋細胞への能動輸送が考えられている心筋脂肪酸代謝診断薬の123I-BMIPPを用い、画像による同様の検討を試みた。その結果、123I-BMIPPもSPECT/CTにてBATを明瞭に描出したものの、その放射能集積は麻酔下でも継続したことから、両者の間に異なる集積機序が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究課題での実施予定項目のうち、スカベンジャー受容体を標的とした新規イメージングプローブの合成については進展が得られていない。これは当初予定していたLOX-1(Lectin-like oxidized LDL receptor-1)を標的とする4-hydroxy-2-nonenalのhistidine誘導体につき、化合物設計と合成経路の組み立てまでは完了したものの、その合成原料の入手が困難になってしまったことによる。また、COVID-19感染拡大の影響が長引く状況下、オンライン講義等の教学に割かれる時間の増加やRI実験施設の使用規制により、別化合物の合成着手に至らなかった。 一方でoxLDLをプローブに用いたin vitroおよびin vivo研究は概ね順調に進んでいる。特に物理的半減期の長いI-125で標識した125I-oxLDLでSPECT撮像できたことは、作製したプローブを長期間利用可能という点において、今後のex vivo研究との連携を考える上で極めて有用な成果と考えている。現在は代謝性疾患(甲状腺機能異常)や動脈硬化症モデルマウスの作製と、それらを用いた基礎検討を開始している状況である。 以上の点を総合的に鑑み、進捗状況の自己評価は「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現状として作製が可能な放射性プローブである125I-oxLDLを活用することで、種々疾患におけるスカベンジャー受容体CD36の関与につき、その解明研究を基軸に進める。進捗状況の項に記載した代謝性疾患や動脈硬化症の他、以下の2つのモデル動物での検討を試みる。 担がんモデルマウス:腫瘍細胞におけるCD36の発現に着目し、転移能(悪性度)の異なる腫瘍細胞を接種したマウスに125I-oxLDLを投与、病巣部における放射能集積をSPECT/ CTにて画像化する。また、摘出後の組織についてex vivo実験(放射能集積とCD36発現量の関連性の確認)を実施する。検討の対象に用いる腫瘍細胞としては、乳がん細胞のMDA-MB-231とMCF-7を準備している。 運動負荷マウス・廃用性筋委縮モデルマウス:CD36は骨格筋にも広く分布していることが知られている。そこで、運動生理学的側面から骨格筋量の増減と身体機能の相関に関する知見を得る目的で、強制走行装置を用いて運動負荷をかけた、あるいは片側後肢をギプス固定したモデルマウスを作製する。125I-oxLDLを投与後、これらのマウスから筋肉(ヒラメ筋,足底筋)を摘出し、放射能集積およびCD36発現量の相違をex vivo実験で検証する。 なお、LOX-1を標的とした低分子放射性プローブについては候補化合物の探索を継続し、有用と考えられるものを見出し次第、計算化学手法による構造の最適化と合成検討に移行する。
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Causes of Carryover |
(理由)マウスを強制走行させるためのドラム式運動負荷装置を購入予定であったが、トレッドミルを借り受ける見通しが立ったため購入を見送り、これを用いた実験を次年度に実施するように変更した。また、COVID-19による移動規制により、旅費の支出も発生しなかった。以上の理由により、使用額が減少した。
(使用計画)次年度は、当初の予定よりも主にマウスと放射性同位元素の購入費において増加が見込まれるので、当該助成金の使用についてはこれらに充てる予定である。
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