2023 Fiscal Year Research-status Report
生体膜リン脂質に着目した抗がん薬誘発末梢神経障害予防/治療薬の開発
Project/Area Number |
21K06670
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
江頭 伸昭 和歌山県立医科大学, 薬学部, 教授 (80352269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川尻 雄大 九州大学, 薬学研究院, 講師 (30621685)
山本 将大 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (50825693)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 末梢神経障害 / 生体膜リン脂質 / グリセロリン脂質 / ドラッグリポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
オキサリプラチンなどの抗がん薬は、高頻度で末梢神経障害を引き起こし、がん患者のQOLを著しく低下させるだけではなく、重篤例ではがん治療の継続が出来ず、医療現場で切実な問題となっている。しかし、抗がん薬誘発末梢神経障害の有効な予防/治療法は確立されておらず、アンメットメディカルニーズが満たされていない疾患(副作用)である。我々はこれまで行ってきた研究から、膜タンパク質の異常とともに引き起こされる抗がん薬による坐骨神経の軸索やミエリンの変性などが、末梢神経障害発現の引き金になっている可能性を明らかにしてきた。一方、生体内の全ての神経系組織にあるリン脂質(グリセロリン脂質)は、生体膜形成(細胞の隔壁)、エネルギー貯蔵庫、シグナル伝達メディエーターとしての役割以外に、坐骨神経の軸索やミエリンの制御などの機能も有しており、末梢神経障害の病態形成に関与することが示唆されている。そこで本研究では、神経障害の病態形成に関与する生体膜リン脂質に着目し、新たな抗がん薬誘発末梢神経障害予防/治療薬の開発を目指す。今年度は、昨年度に引き続き、抗がん薬(オキサリプラチン、パクリタキセル、ボルテゾミブ)をラットに反復投与して、動物モデルを作製し、坐骨神経、脊髄後根神経節などのサンプルを採取し、脂肪酸分析、エイコサノイド分析を実施した。すべてモデルにおいて,脊髄組織では顕著なリピドーム変化は認められなかった。一方、坐骨神経とDRGにおいて、リン脂質画分の脂肪酸組成に目立った変化はなかったが、中性脂質画分では、オキサリプラチンモデルで坐骨神経における中性脂質量の減少、DRGにおけるパルミチン酸量の増加が認められた。パクリタキセルやボルテゾミブのモデルでは目立った変化はなかった。また、エイコサノイド分析では、オキサリプラチンおよびパクリタキセルモデルにおいて、変化傾向のある脂質メディエーターを複数見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LC/MS/MS質量分析装置の都合や、勤務先が変更となったため、脂質解析等全体的に進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在実施している、抗がん薬誘発末梢神経障害の動物モデルにおけるグリセロリン脂質および脂質メディエーターの脂質解析を進めて、いくつかの責任分子を同定していく。一方、培養細胞や動物モデルを用いて、候補薬やグリセロリン脂質関連物質の神経障害抑制効果を検証していく予定である。また、今後は、質量分析顕微鏡による空間情報の取得や、組織を構成する細胞種ごとのリピドミクスを実施することで、詳細な情報を収集する必要がある。
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Causes of Carryover |
勤務先の変更などの影響により、研究の全体的な進捗がやや遅れており、実質的に支出が少なくなったため次年度使用額が生じた。次年度は必要な物品の購入、学会出張、論文投稿を行い、研究を推進する予定である。
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Research Products
(1 results)