2022 Fiscal Year Research-status Report
赤血球期マラリア原虫の特異的なイオンチャネル形成機構におけるRON3の機能解明
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21K06989
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊藤 大輔 鳥取大学, 医学部, 助教 (80609298)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マラリア / 寄生胞膜チャネル / 赤血球膜チャネル / RON3 / タンパク質間相互作用 / ビオチン化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
トリメトプリム(TMP)存在下で安定化する大腸菌由来ジヒドロ葉酸還元酵素を基盤とする不安定化ドメイン(DDD)とHAタグをRON3のC末端に付加したRON3-DDD原虫はTMP非存在下で生存できず、輪状体で発育不全を起こす。本研究ではTMP非存在下におけるRON3タンパク質の性状と機能を解析した。RON3は赤血球侵入型原虫で発現してN末断片(RON3N)とC末断片(RON3C)にプロセシングされるが、約60%のプロセシング阻害と約40%の原虫の侵入不全が認められた。侵入後の輪状体ではRON3Cの消失が確認され、時間経過による寄生胞膜チャネル活性の上昇は認められなかった。また赤血球侵入型原虫の分泌小胞から寄生胞に分泌されるRESAは赤血球膜に輸送されたのに対して、輪状体から分泌されるSBP1は約60%が赤血球膜に輸送されず、約60%の赤血球膜チャネル活性の低下が認められた。以上の結果から、RON3のプロセシングは赤血球侵入に重要であり、RON3Nは侵入直後の寄生胞膜チャネル形成、および赤血球膜にタンパク質を輸送するトランスロコン形成、RON3Cは寄生胞膜チャネルの増加に必要となる原虫細胞膜から寄生胞膜へのタンパク質輸送に関与することが示唆された。現在これらの成果について査読付き英文論文を投稿中である。当初の目的であるRON3相互作用分子の同定については、RON3NとRON3Cが複合体を形成することを明らかにし、この複合体形成がチャネル形成に重要であることが示唆された。当初予定していたTMP存在下、および非存在下におけるHAタグを用いた免疫沈降産物の比較ができないため、代替案として近位依存性ビオチン化酵素AirID をRON3のC末端に付加したRON3-AirID原虫を作出した。これまでにRON3自身がビオチン化されたと考えられる分子量以外に複数のシグナルを検出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の第一目的であるRON3相互作用分子の同定に向けた目処が立った。またRON3断片どうしの複合体を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
RON3-AirID原虫感染赤血球内でビオチン化されたタンパク質を質量分析法により同定する。同定したRON3相互作用候補分子とRON3断片にそれぞれ異なるタグを付加した組換えタンパク質をコムギ無細胞タンパク質合成法により合成し、プルダウンアッセイにより相互作用領域を明らかにする。またTMP非存在下におけるRON3-DDD原虫の輪状体分泌タンパク質SBP1の輸送阻害が原虫細胞膜と寄生胞膜のどちらで起きているのかを明らかにするために、免疫電子顕微鏡法による輸送タンパク質の局在解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進展に伴い、当初予想し得なかった新たな知見が得られたことから、当初の研究計画を変更する必要が生じたことにより、その調整に予想外の日数を要したため年度内に完了することが困難となった。また本年度参加した2回目の学会の旅程が年度を跨いだために予算を執行できなかった。研究計画を年度内に完了することはできなかったが概ね順調に進展しており、旅費も含めて次年度初めに速やかに予算を執行する予定である。
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Research Products
(7 results)