2021 Fiscal Year Research-status Report
加齢性サルコペニアへの炎症性サイトカインの関与とTAK1阻害による治療法の開発
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21K07339
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
遠藤 逸朗 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10432759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉橋 清衛 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (30567342)
安倍 正博 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (80263812)
金井 麻衣 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (90836470)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 炎症性サイトカイン / 骨格筋萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
TNF-α過剰モデルマウス(Skgマウス)では、食餌摂取量はコントロールマウスと同等であったが、マンナン誘導によるTNF-α上昇および関節炎スコアの悪化とともに体重の減少がみられた。体重の減少および関節炎スコアは、TAK1阻害薬であるLLZによりいずれも改善した。TNF-α過剰モデルマウスでは、体重補正した握力もコントロールに比して低下していたが、LLZの投与によりコントロールと同レベルまで回復した。組織所見では、I型筋線維、II型筋線維ともTNF-α過剰により骨格筋線維径の縮小を認めたが、これらはいずれもLLZによりコントロールと同レベルまで回復した。また、TNF-α過剰モデルマウスでは、骨格筋核の周囲にリン酸化TAK1の染色性を認めたが、LLZの投与によりこれらの染色性は消失した。骨格筋芽細胞株C2C12に分化誘導を加えた後にTNF-α、TGF-βあるいはこれらを同時に添加すると筋管細胞径はいずれも縮小した。ここにLLZを添加したところ、筋管細胞系はいずれもコントロールと同等かそれ以上まで回復した。また、C2C12細胞にTNF-α添加ではMyostatin mRNA発現が上昇し、これはLLZの投与によりコントロール以下まで低下した。さらに骨格筋ミオシン重鎖の速筋タイプ(II型)である、myh4 mRNA発現はTGF-βにより低下したが、これはLLZ投与によりコントロールと同レベルまで回復した。これらの結果より、TNF-α過剰では、組織に存在するTGF-βとともにmyostatinの発現増加、II型速筋線維の発現低下などを介して筋線維径の萎縮、筋力低下をきたすが、TAK1阻害薬LLZはTNF, TGF受容体の細胞内シグナル抑制を介して骨格筋萎縮を抑制することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TNF-α過剰モデルマウス(SKGマウス)では、筋力の低下とII型速筋線維優位の萎縮がみられており、炎症性サイトカイン過剰に伴う骨格筋萎縮モデルが作成できていた。同マウスにたいしてTNF, TGF受容体の細胞内シグナル伝達に枢軸的な役割を果たすTAK1の阻害薬、LLZを投与したところ、骨格筋径の回復を伴う筋力の改善がみられたことから、in vivoにおける検討では当初予想した結果が得られている。さらに、C2C12を用いたin vitro 検討においても、TNF-α and/or TGF-βによる筋管細胞幅の減少がみられるとともに、ここにLLZを投与することにより、筋管細胞幅の回復がみられており、in vivoの結果と一致する。同時にC2C12においては、TNF-α投与によるmyostatinの上昇がLLZによりコントロール以下まで抑制されること、myh4 mRNA発現はTGF-βにより低下したが、これはLLZ投与によりコントロールと同レベルまで回復することなどから、LLZによる抗炎症以外の骨格筋萎縮改善効果がある可能性も考えられる。上記のような進捗から、概ね予定通りの進捗と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
In vivoにおいては、脾細胞培養においてTNF-α発現を評価するとともに、骨格筋量の定量、骨格筋におけるリン酸化TAK1(TAK1経路の活性化の証明)の定量的評価をreal-time PCR, Western等により行う。同時にmyostatin, myogenin, MyoDなどの骨格筋量の規定因子と骨格筋分化制御遺伝子の発現を評価する。In vitroにおいてもMyoD, myogeninといった骨格筋分化制御遺伝子の発現やミオシン重鎖アイソフォームを検討することにより、国家右筋分化がどのように動いているかを検討する。同時にatrogin-1, MurF-1といった筋degradation因子の発現も評価する。さらに、C2C12に対してTNF-αを添加した際のリン酸化TAK1, リン酸化I κBα、リン酸化p38,リン酸化EAK、同じくC2C12にTGF-βを添加した際のリン酸化smad2,3といったTAK1シグナル伝達経路についてWesternにて評価するとともに、LLZがこれらの蛋白発現を抑制出来るかどうかも検討する。これらの検討において、当初予想していたとおりの結果が得られた際には、自然加齢マウスに対してLLZを投与し、抗炎症作用を介した筋力低下、骨格筋萎縮が回復するかどうかを検証する。
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