2022 Fiscal Year Research-status Report
小児C3腎症におけるC3分解活性は,新規の病勢指標として治療の最適化に寄与するか
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21K07840
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
澤井 俊宏 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (90452234)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | C3腎症 / 補体制御異常症 / 補体介在性疾患 / C3腎炎因子 / 抗H因子抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児のC3腎症を対象とし、治療前の血液検体と腎生検組織画像を収集した。臨床経過の収集も継続している。C3腎症の原因とされるC3腎炎因子及び抗H因子抗体が測定できる唯一の研究室として、国内全域から診断・治療の相談に対応した。 C3腎症は、遺伝子異常を背景として発症する症例は20%程度にとどまり、多くはC3転換酵素の働きを延長するような自己抗体で発症することが明らかになりつつある。具体的には、C3bBbに対する自己抗体や、B因子に対する抗体などが考えられる。 これまでの症例の集積でも、上述のような測定結果が多く、「なんらかの理由によって生じる自己抗体がC3腎症の主要な原因である」と考えて良いと思われる。つまり、溶血性連鎖球菌をはじめとする上気道炎の原因となるような感染症に罹患後、急性糸球体腎炎の発症様式で症状が出現し、数ヶ月の経過でC3腎症と判明することが多い。このような症例は、海外には少なく、特に日本国内で多い。その理由の一つとして学校検尿での無症候性の検尿異常での発見契機が考えられるが、人種差による病原体との反応性の違いもあるかもしれない。 C3腎症の補体系を解析する過程で、測定方法を応用して新規治療薬による合併症がTMAを発症することを明らかにできた。ウイルスベクター製剤を使用した場合、重篤なTMAを発症する症例が確認されている。臨床経過は補体系が関与する非典型溶血性尿毒症症候群に類似するが、補体系の関与がなく、抗補体薬は無効であることを明らかにした。今後、臨床応用が進むウイルスベクター製剤での合併症の対策として、重要な知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規の症例は3例と少なかった。測定手技は概ね安定して実施できている。試薬の購入は円安の進行や全体的な価格改定で入手が困難であり、一度に複数検体の測定を実施するなど、工夫を要する。国際学会での往来も再開されつつあり、国外の研究者との情報交換もできるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き症例を収集しつつ、検体を用いて補体因子・抗H因子抗体の測定を行う。過去の症例の経過観察データを入手し、測定結果と臨床経過の相関を明らかにする。学会・研究会で成果を発表して情報を収集し、論文化に向けて準備を進める。
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Causes of Carryover |
試薬を購入する費用に使用する
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