2021 Fiscal Year Research-status Report
新型コロナウイルス研究のためのαウイルスベクターを構築基盤とした実験系の確立
Project/Area Number |
21K08490
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田中 淳 大阪医科薬科大学, 研究支援センター, 助教 (20321953)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
現在世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス(SARS-CoV2)は、エアロゾルによる感染のリスクがあるためP3施設にて細心の注意をもって取り扱う必要があり、野生型ウイルスを取り扱う研究には多くの制約と危険を伴う。SARS-CoV2の抗体の中和活性や標的細胞のウイルス感受性をP2施設で安全に評価するために開発されたSARS-CoV2シュードタイプウイルスとして、これまでにレトロウイルスベクターや、組換え型牛水疱性口内炎ウイルスを用いた、SARS-CoV2のスパイク蛋白質(CoV2-S)を持つシュードタイプウイルスが報告されているが、ウイルス力価が上がりにくいなどの問題がある。本研究(21年度)ではSARS-CoV2のスパイク蛋白質を持つシュードタイプウイルスを標識アルファウイルスベクターを用いて作製することを目的とし、アルファウイルス粒子上に発現できるCoV2-S蛋白質の構造を検討している。最初にSARS-CoV-2のS蛋白質発現ベクターと標識アルファウイルスベクターを293T細胞にco-transfectionし、SARS-CoV-2シュードタイプウイルス粒子の産生について検討した。この場合産生されたウイルス力価はチクングニアウイルスの膜蛋白質発現ベクターと標識アルファウイルスベクターとを用いて作製した標識チクングニアウイルスベクターのおよそ1万分の1程度の力価であり、ほとんどシュードタイプウイルスが産生されないことが明らかとなった。チクングニアウイルスの膜蛋白質はその細胞質ドメイン部分でウイルスゲノムを内包するカプシドタンパク質と結合することから現在はCoV2-Sの細胞質ドメイン領域にチクングニアウイルス膜蛋白質の細胞質ドメイン部分を融合や置換させるなどして様々な組換えCoV2-S蛋白質を作製しその特性、シュードタイプウイルス粒子形成について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の野生型新型コロナウイルスゲノムのスパイクタンパク質遺伝子発現ベクターでは発現ベクターの構造を様々に修正しても培養細胞で十分な量の蛋白質発現を得ることができず、人工的にコドン最適化されたスパイクタンパク質遺伝子配列がどうしても必要であるという結論にたどり着くまでにかなりの実験を費やしてしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在はCoV2-Sの細胞質ドメイン領域にチクングニアウイルス膜蛋白質の細胞質ドメイン部分を融合や置換させるなどして様々な組換えCoV2-S蛋白質を作製しその特性、シュードタイプウイルス粒子形成について検討中であるが、組換えでない本来のCoV2-S蛋白質を持つ形でのシュードタイプウイルス粒子形成についても引き続き検討していこうと考えている。
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Causes of Carryover |
所属施設が途中で変更したため、新しい施設での実験環境が十分に整っておらず、実験を十分に進めることが出来なかったため次年度未使用額が生じた。現在、新施設での実験環境を順次整えており、この度安全キャビネット、ディープフリーザーを当施設に設置することができた。これにより今後は現在の施設において培養細胞等を用いた実験を実施できるようになるため細胞培養に必要な試薬、培地等の購入に使用する予定である。
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