2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the control mechanism of leptin signal transduction by hypothalamic heparan sulfate
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21K08588
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
永井 尚子 愛知医科大学, 分子医科学研究所, 助教 (00367799)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ビオチンクロスリンカー標識ヘパリン / ビオチン化タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の中枢神経系にある視床下部は、エネルギーの摂取と消費のバランスを保つために精巧な制御機構を発達させてきた。その中でもレプチンシグナルは、エネルギーバランスに対する反応の仲介役として中心的な役割を担っている。報告者らは、主に細胞表面や細胞間隙に存在する硫酸化糖鎖の一種であるへパラン硫酸の存在がレプチンシグナルに関与することを見出した。ヘパリンとレプチン受容体の相互作用が関与するかどうかを検討するために、2022年度において酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)と、細胞表面でのビオチンクロスリンク実験を行い、ヘパリンとレプチン受容体が相互作用する可能性を検討した。へパラン硫酸に構造が類似しているヘパリンにレプチンが結合するかどうかをELISAで確認しようと考えたが、大腸菌に発現させたレプチン受容体はレプチンとの結合を示さなかったため、レプチン受容体が正しい高次構造をとっていないと判断しELISA実験は行わなかった。ヘパリンとレプチン受容体が相互作用する可能性を検討するための代替実験として、レプチン受容体を発現するNeuro2A細胞にビオチンクロスリンカー標識ヘパリンを反応させ、レプチン受容体へのヘパリン結合を検討した。ビオチンクロスリンカー標識ヘパリンを反応させた細胞を蛍光色素で標識したストレプトアビジンで染色すると、蛍光強度の上昇を示したため、細胞表面がビオチン化されていると考えられた。さらに、ウェスタンブロッティングでは、ビオチンクロスリンカー標識ヘパリンで処理した細胞抽出液において、より多くのビオチン化タンパク質のバンドが検出された。 報告者は今後、ビオチン標識されたタンパク質を濃縮精製した後、ウエスタンブロットを行うことにより細胞表面上でのヘパリンとレプチン受容体の相互作用を検討する。さらに、Hs6st2 koマウス脳における蛍光レプチン取り込みを多光子顕微鏡で観察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パラフィン切片を用いた視床下部の免疫染色で明確なシグナルを得ることができず、凍結切片を用いることにしたため再度サンプルを取り直すこととなり、2022年度に計画していたHs6st2 koマウス脳におけるレプチン取り込みの解析ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は今後、下記の実験を行い、レプチンシグナル伝達へのHSの関与とそのシグナル制御機構について明らかにする。 (1)細胞レベルでレプチン受容体とヘパリンが結合するかどうかを確認する。2022年度までにヘテロ二価性ビオチンクロスリンカーでラベルしたヘパリンをレプチン受容体を発現するNeuro2A細胞に添加すると、ヘパリンと相互作用していると思われるビオチン化タンパク質が増加することが確認できたことから、ストレプトアビジンをコートしたビーズでビオチン化タンパク質を濃縮精製し、抗レプチン受容体抗体を用いてウエスタンブロッティングを行い、相互作用しているかどうかを検証する。 (2)レプチンシグナル伝達に必要なHSプロテオグリカンの同定:2022年度に作製した視床下部のレプチン応答性ニューロンに発現するHSプロテオグリカンを確認するために、シンデカン-3、シンデカン-2, グリピカン-1, 5を対象として凍結切片を用いた免疫染色を行う。 (3)Hs6st2 koマウス脳におけるレプチン取り込みの解析:Hs6st2 koマウス脳においてレプチンの取り込みあるいは拡散が阻害され、レプチンシグナル伝達が低下する可能性について検討する。一晩絶食させたマウスに蛍光ラベルしたレプチンを投与する。マウス脳を採取し、1から2 mmの厚さにスライスした後に透明化を行い、蛍光レプチンの分布を多光子顕微鏡にて観察する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:(1)新型コロナの影響で学会参加費、旅費が大幅に減少したため。(2)ビオチン化ヘパリンをストレプトアビジンコートしたプレートに結合させ、レプチン受容体との相互作用を調べる予定であったが、合成したレプチン受容体タンパク質が正しい立体構造を持つことが確認できず、以降の実験(ELISA)を行わなかったため。 使用計画:現在進行中である、ビオチンクロスリンカーを用いた細胞表面でのレプチン受容体とヘパリンの相互作用検討実験のためのクロスリンカーの購入、2022年度に行う予定であったマウス脳におけるレプチン取り込みの解析のためのリコンビナントレプチンの大量購入、近赤外蛍光ラベルを行う試薬の購入、他大学での顕微鏡施設利用費に支出する予定である。
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