2021 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫からみた羊膜の維持・修復機構:前期破水の予防・治療をめざして
Project/Area Number |
21K09540
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
最上 晴太 京都大学, 医学研究科, 講師 (40378766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 英治 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10544950)
千草 義継 京都大学, 医学研究科, 助教 (80779158)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 前期破水 / 羊膜 / 創傷治癒 / 絨毛膜下血腫 / 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.羊膜のリモデリングと恒常性維持:2021年度は、絨毛膜羊膜炎を原因とするヒトの前期破水症例を組織学的に解析した。まず卵膜へのストレス、損傷状態をみるため、アポトーシスマーカーのcleaved-caspase 3の免疫蛍光染色を行ったところ、陽性細胞は、感染症例の羊膜細胞にはほとんどみられなかった。つまり、感染による羊膜へのダメージはネクローシスが優勢であり、アポトーシスはほとんど生じていないことが判明した。次に増殖マーカーであるki67の免疫蛍光染色を行うと、前期破水症例ではki67陽性の上皮細胞が有意に増加し、さらに非胎盤側の羊膜に比べて、胎盤側の羊膜で増加していた。これは羊膜が感染のストレスを受けながらも、組織修復・防御反応として羊膜細胞を増殖させている可能性があり、羊膜でリモデリングが行われている可能性が示唆された。
2. 自然免疫による羊膜の修復機構:子宮内出血(絨毛膜下血腫)も、感染と同様、前期破水・早産の重要な原因である。2021年度は、絨毛膜下血腫による破水症例を組織学的に解析した。絨毛膜下血腫群の羊膜上皮細胞では、間葉細胞マーカーであるvimentinが発現しており、上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transition, EMT)が生じていることが明らかになった。上皮細胞マーカーであるE-cadherinは上皮細胞に同時に発現しており、出血部の羊膜では部分的な上皮間葉転換(partial EMT)が生じていると考えられた。妊娠マウス子宮内出血モデルを作成したところ、マウスでもやはり出血により羊膜上皮細胞のEMTが生じることを証明した。EMTは組織修復に関与することが報告されており、羊膜でも凝固因子、ヘム鉄、あるいは炎症性サイトカインによるEMTを介した組織修復が行われている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.羊膜のリモデリングと恒常性維持:本テーマは、予定通り進捗している。一方、新たにプロスタサイクリンによる羊膜修復機構について解析を進めており、予想以上に進捗している。本テーマでは、プロスタグランジンが羊膜の修復にかかわる可能性につき、検討を行った。ヒト破水症例では破水部の羊膜間葉細胞でプロスタグランジン産生酵素のCOX-2発現が増加していた。一方、CD68陽性マクロファージには、COX-2の発現はほとんどみられなかった。そこで妊娠マウス前期破水モデルを観察すると、破水部羊膜ではやはりCOX-2発現の増加がみられた。さらにこのマウスをCOX-2阻害剤であるインドメタシンを投与して破水させると、羊膜の修復が阻害された。さらにプロスタサイクリン受容体阻害薬を用いても、羊膜修復の阻害がみられ、逆にプロスタサイクリン受容体アゴニストのIloprostを破水部に投与すると、創傷治癒が促進されることを発見した。
2. 自然免疫による羊膜の修復機構:本テーマも予定通り進捗している。ヒト絨毛膜下血腫症例を組織的に解析すると、羊膜へのマクロファージ遊走が増加していた。さらに絨毛膜下血腫群ではCD86陽性のM1型(炎症性)マクロファージが優勢であったのに対し、対照群ではM2型(創傷治癒型)のマクロファージが優勢であった。EMTが創傷治癒を促進していることを裏付けるように、EMTの近傍の羊膜間葉細胞層では、myofibroblastが多数出現し、Trichrome染色によるコラーゲン層の肥厚がみられた。つまり出血による何らかの因子がマクロファージの遊走、活性化を引き起こし、これが羊膜上皮細胞のEMTを促進して羊膜創傷治癒を行っているという機構を、現在考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 羊膜のリモデリングと恒常性維持: 前期破水、早産では、胎児フィブロネクチンが増加し早産のマーカーとして使用されている。一方、胎児フィブロネクチンのExtra domain-A (EDA)というコンポーネントが皮膚などの創傷治癒にかかわっていることが報告されている。2022年度は、EDAと羊膜の修復機構とのかかわりにつき、特に羊膜細胞の増殖との関係を探索する。
2. 自然免疫による羊膜の修復機構:本テーマでは、今後子宮内出血によるEMTを誘導する因子を同定を目指す。TGF-β経路は、EMTを誘導する主要な経路であるが、この経路が活性化しているかどうか羊膜のSmad3/4蛋白のリン酸化を解析する。さらにEMTを阻害すると羊膜の創傷治癒も阻害されるか妊娠マウスで解析する。これは我々の作製した胎仔マクロファージコンディショナルノックアウトマウスを用いて、マクロファージがEMTに必須であるかもさらに追求する。一方、培養系で胎児マクロファージを用いた研究はこれまでにほとんどない。子宮内のResident マクロファージによる実験を行うため、ヒト胎盤からのマクロファージ(Hofbauer cells)を単離、培養系を確立する。一方、臍帯静脈血より単球を単離し、これをCSF1で刺激後にIFN-γ、あるいはIL-4, 13などのサイトカインで刺激し、それぞれM1, M2胎児マクロファージを樹立して羊膜再生実験に使用する。 プロスタサイクリンによる羊膜再生のテーマでは、プロスタサイクリン受容体(IP)欠損マウスを共同研究者の旭川医科大学薬理学教室より譲受し、胎仔IP欠損マウスを用いてマウス前期破水モデルを作成し、プロスタサイクリンによる羊膜の創傷治癒機構の解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度に依頼したサンプル解析が終了していないため。 解析結果が出たら解析料の支払いに充てる予定。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] The significance of clinical symptoms of subchorionic hematomas, "bleeding first", to stratify the high-risk subgroup of very early preterm delivery2022
Author(s)
Megumi Aki, Miyu Katsumata, Koji Yamanoi, Akihiko Ueda, Baku Nakakita, Hirohiko Tani, Kaoru Kawasaki, Yoshitsugu Chigusa, Haruta Mogami, Masaki Mandai, Eiji Kondoh
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Journal Title
Taiwan J Obstet Gynecol
Volume: 61
Pages: 243-248
DOI
Peer Reviewed
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