2022 Fiscal Year Research-status Report
口内法デジタルX線撮影検出器を応用した原子力利用における漏洩放射能検出システム
Project/Area Number |
21K10115
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉田 みどり 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 徳島大学専門研究員 (30243728)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 直樹 徳島大学, 病院, 講師 (10219272)
誉田 栄一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (30192321) [Withdrawn]
細木 秀彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (60199502)
阪間 稔 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (20325294)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | イメージングプレート / 口内法X線撮影 / 放射能 / セシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
福島原子力発電所事故後に汚染した福島県の土壌に含まれる放射性同位元素(放射性セシウム)から放出される低放射線を検出するためのシステムを考案した。穴の開いた50円硬貨を歯科用イメージングプレート上に置き、その上に放射性セシウムで汚染された土壌を含む容器を置いた。一定期間(1~30日)の暴露後、アルミ階段を用いて暴露されたイメージングプレートに低線量のX線を照射すること(X線後照射システム)で、イメージングプレートの感度が高い所を有効に利用し検出能の向上を図った。標準試料(表面線量率0.44μSv)を用いて、そのシステムの有無による低放射能の検出期間を比較した。また、放射能量を変化させて検出期間と総線量との関係を評価した。 評価法は放射線防護の監督者2人が、放射能が検出されたかどうかで判断した。X線の後照射を行わない標準試料の検出期間は、約25~30日だった。後照射により検出時間が40時間(約1/15)に短縮された。放射能量の増加に伴い検出期間は短くなったが、総被ばく線量(放射能量*日数)は14.4~18.7μSvと変わらず、極低線量の検出が可能になった。 結論としては、放射性セシウムからの微量線量(γ線とβ線)により、一定期間放射能にさらされた歯科用イメージングプレートは、その後アルミ階段とともに適切な量のX線を後照射する方法で、短い期間で検出できることが示された。このことから、全国の歯科医院を結集して大規模な放射能検出システムを構築することができると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画では、感度をあげるためにイメージングプレートを複数重ね合わせ、それぞれから得られる画像を重ね合わせて感度上昇を目的とした。イメージングプレートがないときの線量分布(A)、イメージングプレート1枚を透過したときの線量分布(B)、イメージングプレート2枚を透過したときの線量分布(C)、イメージングプレート3枚を透過したときの線量分布(D)を測定した。イメージングプレートの有効感度のエネルギー範囲内でピークを比較したとき、B、C、Dではそれぞれ90%、84%、84%になり画像形成に十分な線量が4枚目のイメージングプレート上に達していることが実験的にわかった。 また重ね合わせによるS/N比上昇だけでなく、イメージングプレートの読み取り方法を工夫して感度を上昇させる方法を考案した。本来ならばイメージングプレートに放射能の暴露後に読み取りを行うが、読取装置のソフトウエア的な線量範囲を広げるために、さらに適切な高さをもったアルミステップを暴露後に微量線量でX線照射をすることで可能となると考えて実験を行った。実験条件を変えて調べたところ最大で検出期間が1/15になり、新たな検出能の上昇の方法が見出され、その結果を専門雑誌に投稿し原著論文として受理された。これらのことから本来の目的である研究の進捗状況は、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
イメージングプレートの重ね合わせにより、透過線量の減衰があまり見られなかったことから、重ね合わせによって得られた各イメージングプレートの画像を重ね合わせた画像のS/N比が向上する可能性があることが示された。これを証明するための実験を行う。実験条件としては、イメージングプレートの枚数を変化させることでS/N比との関係を調べ、適切な重ね合わせ枚数を決定し、低放射能の検出時間がどの程度短縮できるかを調べる。 また今回の新たに考案した低放射能暴露後にアルミステップを用いたX線照射を行うポスト照射法で明らかに検出時間の短縮結果が認められたので、反対に暴露前に同様にX線照射を行うプレ照射法を適用し、ポスト照射法との比較検討を行う。その後プレ照射法とポスト照射法の両方の方法を用いた方法も検討する。前述のイメージングプレートの重ね合わせで有効な結果が認められたならば、その方法も併用しさらなる検出期間の短縮法を検討する。さらにセシウム137のエネルギーピークが662keVで、イメージングプレートの感度ピークが80~100keVにあることから、この差を埋めるために金、錫、鉛のk吸収端を利用するために、各箔を用い放射能分布を調べる実験を行った。金、錫に関しては全体的に放射能量が減少し、利用が難しいことが示唆された。しかし鉛に関しては80keV前後のピーク値がずれた分布が得られ、制動放射線の影響が明らかとなった。このことを利用して歯科用口内法フィルムに内包されている鉛箔(50ミクロン)を利用した制動放射線の発生による感度上昇の可能性について検討を行う。
|
Causes of Carryover |
研究分担者が学会発表のための出張旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症が収束しないためオンライン開催になり使用しなかった。 またK吸収端を利用できる金属を使用しない新しい実験システムを考案し、その実験結果を求めることを行っていたため、あらたな金属を購入せず材料費を使用しなかったため次年度使用額が生じた。 次年度は、本人及び研究分担者も学会発表が多数あるため出張旅費が必要と予想されるため、次年度研究費と合わせて使用する計画である。またイメージングプレートを重ね合わせるための冶具の作製費用と金、錫、鉛以外の新たな金属購入を予定している。
|
Research Products
(2 results)