2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト細胞を用いた治療及び基礎研究の規制策定議論に資する実態調査
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21K10326
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 みさお 京都大学, iPS細胞研究所, 特定教授 (50396701)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 再生医療 / ヒト胚 / 生命倫理学 / 質問紙調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
(A)自由診療で提供されている細胞治療の説明文書分析:国に届出された細胞治療の対象疾患、使用細胞、費用等の実態を明らかにすることを目的に、厚労省がウェブサイトで公開する細胞治療の説明文書約3,000件の内容分析を行った。R3年度は分析と論文投稿を終えて、出版に向けたリバイスに取り組んだ。 (B)細胞治療に関するKAP調査:ヒト細胞を用いた治療に関する一般市民の認知度、関心、受療行動を明らかにすることを目的に、無記名自記式のインターネット調査を行う。R3年度は質問紙の作成に先立つ仮説の設定を検討した。 (C)ヒト胚を用いた基礎研究に関する意識調査:多能性幹細胞から誘導したヒト生殖細胞の作製と受精に対する一般市民の態度について明らかにすることを目的に、無記名自記式のインターネット調査を行った(一般市民3,096名対象)。その結果、78.6%が配偶子の作製までを、51.7%が作製した配偶子の受精までを、25.9%が作製した受精胚の臨床利用までを受け入れると回答し、21.4%は研究自体を受け入れられないと答えた。また、不妊治療中の夫婦や、現状の不妊治療で効果が期待できない夫婦による臨床利用や、疾患遺伝子の遺伝回避や純粋に子供をもうける目的での臨床利用が受け入れられる一方で、同性カップルや独身者による利用、特定の容姿や能力を備えた子供をつくる目的での利用は受け入れられにくかった。本調査では、日本の指針が現在容認していない受精卵の作製について、意見が二分した。今後、規制緩和する場合にも、慎重な検討が求められること等を議論した2本の論文は、国際誌に受理された(Sawai, et al./ Akatsuka, et al. Future Science OA, 2021)。また、ヒト胚のゲノム編集を加える研究に対する一般市民の態度について尋ねた同様の調査論文も、現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(A)自由診療で提供されている細胞治療の説明文書分析:当初の予定では、R3年度のデータ・クリーニングと分析、R4年度の論文執筆と投稿を目指していたが、すでにすべて終了して論文のリバイス作業を行っている。 (B)細胞治療に関するKAP調査:R4年度末までに仮説の設定と質問紙の作成を目指すという当初の予定どおり、順調に研究が進捗している。 (C)ヒト胚を用いた基礎研究に関する意識調査:当初の予定では、R3年度末までに仮説の設定と質問紙の作成までを目指していたが、本年度はヒト生殖細胞細胞の作製と受精に関する質問紙調査の論文が出版に至り、ヒト胚にゲノム編集を加える研究に対する同様の調査も論文執筆まで順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)自由診療で提供されている細胞治療の説明文書分析:R4年度は現在投稿中の論文をリバイスし、国際誌への掲載を目指す。 (B)細胞治療に関するKAP調査:R4年度末までに仮説の設定と質問紙の作成を目指す。質問項目としては、細胞を用いた臨床試験の進捗やエビデンスのない細胞治療に関する認知度、研究と治療の区別に関する理解度、細胞治療への関心、受療行動の有無、動機等を想定している。 (C)ヒト胚を用いた基礎研究に関する意識調査:R4年度はヒト胚にゲノム編集を加える研究に対する意識調査の結果をまとめて論文執筆を終わらせ、国際誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
当初計画よりも生殖細胞作成に関する意識調査と自由診療の再生医療に関する実態調査が順調に進み、予定よりも早く論文化する必要が出てきた。早期に論文化を行い、他の研究者より評価を受けることで、現在、国で議論が始まったばかりである法規制の議論にリアルタイムで研究成果を生かすことが可能となるため、論文作成に伴う英訳費用、投稿料を前倒し請求した。 当初R4年度に行う予定であった生殖細胞作成に関する意識調査と自由診療の再生医療に関する実態調査の論文発表を研究の進展によりR3年度中に前倒して行うものであるため、R4年度に請求する金額は減るものの、研究計画全体では大きな問題はない。また、R4年度末頃までに、ヒト胚へのゲノム編集に関する意識調査の結果を投稿・論文化する。また、自由診療の再生医療に関する一般市民対象の意識調査の質問紙を作成し、実施を目指す。
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Research Products
(4 results)