2022 Fiscal Year Research-status Report
Taktil massageのオキシトシン分泌・ストレス緩和効果と安全性の検証
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21K10542
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岩佐 幸恵 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (60432746)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Taktil massage / オキシトシン / ストレス緩和 / 自律神経 / クロスオーバー試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
Taktil massageは,皮膚を撫でるように柔らかく触るマッサージ法で,1960年代にスウェーデンにおいてSiv Ardeby(2005)によって開発され,緩和ケアや認知症ケアなど,看護の領域でも活用されることが期待される。しかし,臨床に応用するにはまだ十分なエビデンスが確立されていない。本研究の目的は,Taktil massageを補完代替療法の一種である音楽療法と比較することによって,そのオキシトシン分泌効果,それによるストレス緩和効果,そして安全性を検証することである。本研究はランダム化クロスオーバー試験であり,健康な成人を対象にTaktil massage(第1介入)と受動的音楽療法(第2介入)をランダムに割り振る。主要アウトカムは,生物学的指標である唾液中オキシトシン,コルチゾール濃度,副次アウトカムは心拍変動解析による自律神経機能評価と,主観的評価指標である気分プロフィール検査(POMS2日本語版)である。 看護学では,アロマセラピー,手足の温浴などの身体的ケアをリラクセーション技法として取り入れてきたが,客観的な有効性の検定を通過し科学的に有効性が証明された介入は少ない。健康法を臨床に無批判に取り入れるのではなく,効果と安全性を検証しエビデンスを蓄積することが,ひいては看護学の発展に寄与すると考える。 令和4年度は新型コロナウイルス感染症第7波・第8波の影響で,人を対象としたデータ収集は感染予防の観点から困難であったため,検査精度を上げて少ない被験者でも有効な結果が得られるように,ストレスホルモンの追加を検討した。その結果,αアミラーゼ,脳由来神経栄養因子(BDNF)を検査項目に追加することとし,新たな研究計画で倫理審査を受け実施の許可を得た。また,新型コロナウイルス感染症の影響で入手が困難であった超低フリーザーも購入でき,実験環境も整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リラクゼーション効果を十分に得るには,被験者,施術者ともにリラックスした状態で実施する必要がある。しかし,新型コロナウイルス感染症流行第7波・第8波の影響で,防護具なしに被験者と施術者が密に接触することは難しく,安全・安心な実験環境を整えることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染法上の分類を5月8日から2類相当から5類に引き下げられることとなり,被験者は比較的確保しやすくなった。しかし,エアロゾルによって感染すること,感染力は今尚強いことから,密接距離でも感染を起こさないよう注意してデータ収集を開始する。具体的には,被験者にはマスクなしのストレスフリーな状態でマッサージを受けてもらうため,試験2週間前からの健康観察期間の設定,予防接種歴,行動歴の確認を行う。施術者には,前述の予防対策以外に,サージカルマスクを着用し,手指衛生を徹底してもらう。また,試験の前後で換気と環境面の消毒を実施する。新型コロナウイルスは唾液に多く含まれていることから,唾液の採取は専任の人員を配置し,唾液試料による環境汚染が生じないよう細心の注意を払う。
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Causes of Carryover |
データ収集ができず,唾液試料のホルモン濃度分析の費用が発生しなかったため次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせて次年度はデータ収集に努め,その後のデータ分析,学会発表,論文投稿のために使用する予定である。
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