2021 Fiscal Year Research-status Report
1日70球の投球数制限で小学生の野球肘を予防できるのか?骨軟骨障害に着眼して
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21K11446
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松浦 哲也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任教授 (30359913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩瀬 穣志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (80868521)
横山 賢二 徳島大学, 病院, 医員 (10910226)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 野球肘 / 投球数制限 / 予防 / 骨軟骨障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
成長期の投球障害は肘に生じやすく、最大の要因は投げすぎで、学会や連盟から投球数制限が提言されている。しかし提言された投球数の医科学的根拠は乏しく、障害を予防できる投球数の設定が喫緊の課題である。徳島県では、2018年から小学生投手の投球数を1日70球以内とする投球数制限を独自に導入した。その結果、導入前年(2017年)に比べ肘関節痛の発症率が40.6%から31.2%に著しく減少し、この結果を受け、翌年からは全国大会で1日70球の投球数制限が導入されている。しかしながら理論的背景となる徳島県のデータでは2018年の対象の39.5%が2017年の対象にも含まれていることが問題点であった。そこで、投球数制限導入後に投手を始めた選手のみとなった2021年と導入前の2017年の小学生投手における障害実態を比較した。 対象は2017年が352名、2021年が293名だった。検討項目は肘関節痛、屈曲制限、内側上顆の圧痛、外反ストレス痛、肘離断性骨軟骨炎の有無とした。肘関節痛は2017年144名(40.9%)、2021年85名(29.0%)、屈曲制限は2017年67名(19.0%)、2021年23名(7.8%)、内側上顆の圧痛は2017年75名(21.3%)、2021年32名(10.9%)、外反ストレス痛は2017年54名(15.3%)、2021年33名(11.3%)、肘離断性骨軟骨炎は2017年6名(1.7%)、2021年9名(3.1%)だった。以上より2021年度は2017年度に比し、肘関節痛、屈曲制限、内側上顆の圧痛は有意に減少したが、外反ストレス痛と肘離断性骨軟骨炎に関しては有意差が無かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は①1日70球の制限で骨軟骨障害の発生は抑制できるのか、② 1日70球の制限で骨軟骨障害の増悪を抑制できるのか、③70球は1日の投球数として適当なのか、の3項目について検討する予定だった。 ①については予定通り研究が進み、「研究実績の概要」で述べたように投球数制限が導入される間に比べ、1日70球の投球数制限により肘関節痛、屈曲制限、内側上顆の圧痛は有意に減少していたが、外反ストレス痛と肘離断性骨軟骨炎に関しては減少していなかった。 ②は骨軟骨障害50名を対象として3か月おきにX線検査を行い、1年後の修復状況を検討することにしていた。当初は令和3年9月までに初回のX線検査を終了する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で、初回のX線検査終了が令和4年1月になったので、令和4年4月以降も50名の検討を続けている。 ③では 1日の投球数が70球と50球で、前腕屈筋・回内筋群の硬さを超音波エラストグラフィで、投球による疲労度をウェアラブルセンサで比較する予定だった。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で、接触機会の多い超音波やウェアラブルセンサでの検査は制限され、目標とする30名の検討が出来なかった。 以上より、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の3点について検討する。 ①1日70球の制限で骨軟骨障害の増悪を抑制できるのか? 令和3年度に引き続き、50名を対象に、3か月おきにX線検査を行い骨軟骨障害の修復状況を調べる。制限導入前には約30%の投手で1年以内に増悪していたが、少なければ1日70球の制限は7イニングの制限に比べ骨軟骨障害の増悪を抑制できるといえる。 ②70球は1日の投球数として適当か? 現在は1日の投球数を70球としているが、適切な投球数なのか不明である。日本臨床スポーツ医学会は1日50球と提言しており、比較する必要がある。そこで、令和3年度に行えなかった前腕屈筋・回内筋群の硬さを超音波エラストグラフィで、投球による疲労度をウェアラブルセンサで評価する。具体的には、まず投手30名に50球あるいは70球まで投球させる。70球が50球より明らかに筋が硬く、かつ前腕の最大回転速度が遅く、リリース時の前腕の角度が小さくなるのなら、70球より50球が適当な投球数となる。さらに、ウェアラブルセンサは投球ごとに最大回転速度などのデータを収集できるので、他に適切な投球数がないか検討する。 ③1週間・1年間の投球数はどの程度に制限すべきか? 現在、制限されていない1週間、1年間の適切な投球数を設定する。令和4年度の対象100名の投球数を前向きに1年間カウントする。令和5年度にX線検査を行い、骨軟骨障害が新規に発生あるいは悪化した群と、それ以外の群で投球数を比較し、後者の投球数が少なければ、その投球数を適切な投球数とする。
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Causes of Carryover |
(理由)予定していた超音波エラストグラフィとウェアラブルセンサによる評価が新型コロナウイルス感染症の影響で実施できず、次年度以降に実施することになり、次年度使用額が生じた。 (使用計画)徳島県の新型コロナウイルス感染症の状況は落ち着いてきており、令和4年度以降は予定通り研究を遂行できそうなので、翌年度請求額とあわせ、超音波エラストグラフィとウェアラブルセンサの検討のため設備備品費と消耗品費に使用する予定である。
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