2023 Fiscal Year Research-status Report
FUT8二量体化機構を標的にした炎症性疾患・がんの治療薬の開発
Project/Area Number |
21K11647
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
井原 秀之 佐賀大学, 医学部, 准教授 (50452834)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 裕伸 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (60351798)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | FUT8 / 二量体 / 活性型 |
Outline of Annual Research Achievements |
FUT8はN型糖鎖のコアフコース構造の生合成を触媒する糖転移酵素であり、がんや炎症性疾患などに関わる可能性が示唆されていることから近年注目されている。 FUT8は、触媒ドメインとN末端側にあるα-helicalドメイン(coiled-coil domain)とC末端側にあるSH3(Src homology3)ドメインといった2つの独特な付加ドメインから構成されていることが明らかにされている。FUT8の酵素活性には二量体化と付加ドメインの適切な空間的な配置が必要であることから、これらドメインはFUT8の活性をコントロールし得る部位としてその正確な機能解析が期待されている。 本研究ではFUT8の活性制御が可能な方法の開発を目的としてα-helicalドメインに注目し、α-helicalドメイン内の疎水性残基がFUT8の二量体形成を介した酵素活性の発現にどのように影響を及ぼしているのかを明らかにすべく継続して研究を実施している。前年度までに明らかにしたFUT8の酵素活性に影響をおよぼすα-helicalドメイン内の疎水性アミノ酸残基の変異体を更に詳細に解析をおこなったところ、これら残基の変異体においては側鎖の疎水性度の低下に伴って酵素活性が減少することが示されα-helicalドメインの疎水性アミノ酸残基側鎖の疎水性相互作用がFUT8の酵素活性に重要な役割を果たしていることが強く示唆された。また、触媒ドメインや2つの付加ドメインとは異なる部位である膜貫通領域近傍のアミノ酸残基にシステインを導入した変異体で見られる共有結合を介した二量体形成が、α-helicalドメイン内の疎水性アミノ酸残基への変異導入により減少することが明らかになったことからα-helicalドメインの疎水性アミノ酸残基側鎖の疎水性相互作用がFUT8の全体構造での二量体形成や分子間の近接にも必要であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究室がある研究棟の改修工事のため、今年度は充分な研究活動を行うことができなかった。 本年度は、FUT8のα-helicalドメインの疎水性アミノ酸残基側鎖の疎水性度と酵素活性が相関することを明らかにし、変異導入残基のアミノ酸側鎖を介した疎水性相互作用がFUT8の酵素活性発現に大きく寄与していることが示された。また、疎水性アミノ酸残基変異体とステム領域での共有結合を介した二量体形成を行うカイコFUT8を模した膜貫通領域近傍のアミノ酸残基をシステインに置換した変異体を組み合わせた解析により、FUT8二量体におけるα-helicalドメイン間の疎水性相互作用の減少が二量体形成時の分子間の近接を妨げていることが示された。 本年度得られた結果は、次年度以降においてα-helicalドメインを標的にしたFUT8活性制御の方法を開発するうえで有益な情報であると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、FUT8のα-helicalドメインの疎水性相互作用の減少がSH3ドメインの空間配置におよぼす影響について調べて、α-helicalドメインを標的にしたFUT8酵素活性阻害法の開発を行う予定である。併せてα-helicalドメイン変異体が、糖鎖構造やシグナル伝達といった細胞機能にどのような影響を及ぼすのか明らかにしFUT8変異体を用いた病態モデルの作製についても試みる予定である。
|
Causes of Carryover |
研究室のある研究棟の改修工事が行われたことから、本年度研究計画のための研究環境や研究時間の確保が困難であったため本年度研究計画の大部分を実施することができず次年度使用額が生じた。本年度の助成金より生じた次年度使用額および翌年度分として請求した助成金については、本年度実施できなかった研究計画や次年度の研究計画を実施するためもしくは成果発表のために使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)