2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K11698
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
水澤 典子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (80254746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 武男 新潟薬科大学, 薬学部, 准教授 (10350399)
大東 いずみ 徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (00596588)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵β細胞 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
膵ベータ細胞はインスリンを産生する唯一の細胞である。膵ベータ細胞でのインスリンの産生および分泌の低下は、糖尿病をはじめとする代謝異常症の原因となることが知られ、膵ベータ細胞の正常機能の維持機構を明らかにすることは高齢社会の健康維持を目指す上で重要である。 我々はマウス由来の膵ベータ細胞株MIN6を用い、膵ベータ細胞にはPrss53 (protease serine S1 family member 53) が高レベルに発現していることを見出した。しかしPrss53 の膵ベータ細胞における機能は不明であったため、その機能解析を行っている。Prss53の遺伝子発現を低下させたMIN6を用いて、培養条件の変動に関連したMIN6のエネルギー代謝への影響を検討した。さらに、細胞のエネルギー代謝経路を高感度に測定可能な細胞外フラックスアナライザーを用い、Prss53発現量の低下が膵ベータ細胞に与える影響を検討した。これまでPrss53の低下による ミトコンドリア機能の低下は確認していたが、具体的にはミトコンドリア内の酵素系である酸化的リン酸化経路が低下しATP産生が低下するという新たに検証結果が得られた。Prss53の低下によるATP産生の全体量は変わっていないため、解糖系の亢進と酸化的リン酸化の抑制が同時にもたらされている可能性があった。本研究では引き続き細胞株を用いて検証するほか、糖尿病モデルマウスおよび既存のPrss53ノックアウトマウスの膵島を採取し、in vivoの反応においても、加齢などによるPrss53の低下する環境の詳細を明らかにし、糖尿病および糖尿病が増悪因子となる神経疾患も含めた病態との関連を明らかにする。膵ベータ細胞の機能低下に関与する病態の解明と代謝異常症を中心とした治療方法の開発へと展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞株を用いた実験において、新たに細胞外フラックスアナライザーを用い、これまで予測してきたPrss53のミトコンドリア機能に関与する一部は検証され、これからの動物実験の基盤となった。これにより、おおむね順調に進展していると評価した。現時点で、糖尿病モデルマウス、および海外からのマウス入手手続きと実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き細胞株を用い、膵β細胞の代謝能関連を中心とした機能解析を進め、In vivo研究につなげる。特に、MIN6におけるPrss53ノックダウンの影響検討に加え、遺伝子導入の容易な一般的な細胞株HEK293などを用いてPrss53と相互作用するタンパク質の同定を行い、関連経路を特定する。糖尿病モデルマウスにおける詳細な解析と並行して、海外機関において作製されたPrss53ノックアウトマウスを入手し、解析を進める。
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Causes of Carryover |
細胞株維持のための液体窒素費用および施設利用費用を年度をまたいで確保した。また、細胞株を用いた各種機能解析に加え、今後用いる糖尿病モデルマウス、海外機関において作製されているPrss53ノックアウトマウスの入手と維持のため、これにかかる経費として、一部予定を変更して次年度使用額とした。
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