2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a Large-Scale Molecular Dynamics Framework and Application to Complex Fluids
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21K11923
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡辺 宙志 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (50377777)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 分子動力学法 / 領域分割 / ロードインバランス / 並列化 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子動力学法は原子レベルで物質の挙動を観察できる一方、計算コストが大きく、大きな系を計算するためには並列化が必須である。この時、短距離相互作用系であれば領域分割による並列化が主要な方法となるが、系が非一様である場合、ロードインバランスが問題となるため、ロードバランサーの性能が重要となる。従来使われてきたロードバランサーは中央処理型であり、性能は良好であるものの、全情報を中央ノードに集める必要があることから、1ノードの主記憶容量が計算規模を決めてしまう。そこで、分散処理型のロードバランサーが必要となる。
今年度は、分散処理型ロードバランサーとして新しくSkew Boundary (SB)法を開発し、既存の中央処理型と分散処理型のロードバランサーの性能比較を行った。中央処理型のロードバランサとして各軸毎に座標をソートして領域分割を行うGlobal Sort法、再帰的に領域を分割するRecursive Coordinate Bisectioning法を採用し、分散処理型としては単純な一次元分割(1D)、ボロノイ分割、そして新たに提案したSB法を採用、実装した。実際に分子動力学シミュレーションコードにロードバランサーを搭載し、その性能を検証したところ、分散処理型は中央処理型に比べて遜色ない性能を示した。一方で、SB法はロードバランシングが収束しきらないうちに次のステップに進んでしまう、ボロノイ法はロードバランシングのアルゴリズムそのものの実行時間が長い、などの特徴が見られた。SB法はロードバランシングにかかるコスト、通信時間などが安定していたが、他の反復アルゴリズムに比べて収束がやや遅い傾向にあり、今後は収束を早める工夫が必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標は、超並列計算資源の能力を活用するためのフレームワークの構築である。この課題において中心的な手法に据えている短距離分子動力学法で問題となるロードインバランスの問題について、大規模な計算資源でも適用可能な分散型ロードバランサーを提案、実装し、メモリ使用量を大幅に抑えつつ、性能は中央処理型にひけをとらない性能を実現できた。以上から、本研究課題の目的の実現に必要な要素技術の開発は順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、目的に応じた最適にロードバランサー自動的に適用できるフレームワークの構築、及びSIMD化など低レイヤにおける最適化フレームワークとの結合について検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも物品費が安価であったために未使用額が発生したが、引き続き,次年度以降も物品購入に使用する。
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