2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K11928
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
仲田 晋 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (00351320)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シミュレーション / コンピュータグラフィックス / 3次元形状表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は力学現象のシミュレーションに適した3次元形状表現手法の確立である.2021年度は特に複雑な3次元曲面形状を少ないデータ量で表現すること,および気泡を多く含む軽量金属材料である発泡金属の3次元形状から有限要素メッシュを生成することの2つの課題の解決を計画していた. 前者の複雑形状な曲面表現については,従来は正規格子に基づく区分的多項式として曲面が定義されていたために解像度に応じてデータ量が大幅に増えてしまう問題があった.これを解決するために,本研究課題では適応的な空間分割に基づく区分的多項式に変更することで解像度に大きく影響されない関数表現とすることで解決を図った.この考え方は従来の多項式補間の枠組みでは対応できないため,適応的格子に特化した新たな数学的な枠組み,および関数生成のアルゴリズムを新たに開発することで解決に至っている.特に関数の連続性と滑らかさを保証しながら適応的領域分割に対応していることが本手法の特徴であり,結果的に形状表現の精度を維持したままデータ量を大きく削減できることが確認されている.なお,この研究成果については2021年度日本応用数理学会年会にて公表済みである. 後者の発泡金属の3次元形状モデルから有限要素メッシュを生成する問題については,2021年度には最終的な解決には至っていない.一方,発泡金属の材料特性に関係する主要なパラメータを決定する枠組みについては一定の成果があり,有限要素メッシュの生成に向けて前進したと考える.ここで解決した問題は,金属壁の厚み,穿孔の有無といった発泡金属形状に関わるパラメータをユーザが決定するまでの時間を短縮するものであり,シミュレーションに基づく材料特性の解明に貢献するものと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の取り組みは,(1)少ないデータ量で複雑形状の曲面モデリングを実現すること,および (2)曲面表現された3次元発泡金属形状から有限要素メッシュを生成することの2つであった. (1)については3次元曲面を陰関数形式で表現する際のデータ量が解像度に応じて大幅に増加してしまうことが課題であり,適応的曲面表現の導入により解決を図った.本研究課題では3次元形状をシミュレーションで利用することが前提となるため,曲面を表現する関数は計算量の観点で有利な区分的多項式型を用いる.一方,区分的多項式型は正規格子による空間分割が必要であるためデータ量の面では不利である.これを解消するために適応的な格子による空間分割を導入することとした.従来の区分的多項式型の手法は正規格子における多項式補間が前提となっているため,本研究課題では適応的格子における多項式補間の手法の開発に取り組み,これに成功している. (2)については曲面として生成された3次元発泡金属形状を多面体に適切に変換するにはどうすればよいかが論点であり,その際に解決すべき課題は形状生成にかかる計算時間と多面体の精度の2つである.今次は前者の課題,すなわち発泡金属の曲面モデルを生成する際の計算量の削減については一定解決できたが,後者の課題,すなわち多面体への変換の精度向上については完成に至らなかった.3次元発泡金属形状の生成の問題は,3次元空間に配置された複数の初期形状に基づき,隣接する気泡を隔てる壁に相当する曲面を定義する手法である.この際,ユーザは壁の厚みや穿孔の有無といった形状に関わる情報をパラメータ制御し,結果を目視で確認しながら調整する必要がある.従来はこの調整作業のたびに形状生成処理の時間がかかるためパラメータ調整が困難であったが,今次の高速化によりこの問題が一定解消されている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で残された主要な課題は関数表現された複雑形状のリアルタイム描画の実現,および発泡金属曲面形状からの有限要素メッシュ生成の2つである. 前者についてはシミュレーションの前処理で必要な形状決定処理で必要なプロセスであり,ユーザが目視で確認しながら最終的な3次元形状を決定することを可能とする.ここでの3次元形状は単純な多面体ではないため,従来のCGリアルタイム描画技術は適用できないという難しさがある.この問題の解決のためには,前年度に提案した適応的格子に基づく多項式表現に特化した新しい描画手法の開発が必要であり,これを2022年度の主要テーマの一つと位置付ける.ここでのリアルタイム描画は内部的には曲面と直線の交点を求める処理,つまり非線形方程式の解を短時間で得るという制約の中でアルゴリズムを構築することがポイントとなる. 後者は発泡金属の曲面形状から四面体メッシュを生成する問題であり,発泡金属の材料特性解明のためのシミュレーションに貢献するものである.発泡金属は気泡を多く持つ複雑な3次元形状であり,シャープエッジを多く持つという特徴がある.曲面の表面を多面体に変換する手法は多くあるが,シャープエッジを適切に多面体に変換することは難しく,発泡金属に特化した新たな変換手法が必要となる.仮に形状表面を適切に多面体に変換できたとしても,金属内部の四面体を生成する処理が別途必要である.この処理ではメッシュ品質をいかに保証するかが重要な論点であり,金属内部の空間に適切な接点を配置するアルゴリズムの開発を目指す.
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Research Products
(2 results)