代数的アプローチに基づくファジィ・マルチ集合論の再構築

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K12043
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 河口 万由香 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (30214620)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: ファジィ・マルチ集合論 / BCK代数 / 集合演算

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、マルチ集合およびファジィ・マルチ集合の理論をBCK代数に基づいて再構築し、最終的には、ファジィ集合、マルチ集合、ファジィ・マルチ集合の各構造について、BCK代数を共通プラットフォームとした統一基盤を形成することである。各集合論の特徴や位置づけ、公理の強弱のような関連が整然と整理されることとなり、ひいてはさらなる応用への視野が広がるものと期待される。
本研究の初年度計画は、以下の項目からなる。(A) BCK代数理論の整理と整備、具体的には非有界BCK代数が束をなすための必要十分条件を求め、BCK代数のordinal sumがまたBCK代数をなすことを確認する。(B) マルチ集合論に対応するBCK代数の公理の整備、具体的には非有界BCK代数の和演算と積演算を構成するために必要な性質を求める。(C) 以上の結果を適宜内外の学会で発表するとともに、ファジィ・マルチ集合に関する情報収集を行い、次年度の研究段階への準備を進める。
2年目以降の計画は、ファジィ・マルチ集合に相当する代数モデルの構築であり、(D) BCK代数の直積がまたBCK代数をなすための条件を求める、(E) ファジィ・マルチ集合のグレード部分とカウント部分をそれぞれに異なるBCK代数で表現し、その直積をもってファジィ・マルチ集合の代数モデルを構築する方法の検討、である。以上の成果を内外の学会で発表するとともに、当該研究期間の後半には最終的な論文投稿を行う。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究の初年度である2021年度は、上記項目５に示した計画(A)についての証明は完成し、内外の先行研究成果との整合がとれることも確認できた。(B)については、非有界BCK代数がいわゆる条件(S)を満たすことを確認してマルチ集合の和集合演算を構成する手段を確立したこと、およびBCK代数のordinal sumで上に非有界なものを構成し、ある種の積演算を定義して積集合演算を確保したことで、マルチ集合論への対応に関してほぼ目処がたった段階である。ただし(C)については研究代表者の私事（家族の死去や体調不良）に加えて、コロナ禍で修了間近な大学院生の学会発表指導を優先したため、当該研究に関する発表の機会を逸してしまい計画通りの遂行が叶わなかった。

Strategy for Future Research Activity

本研究の２年目である2022年度は、初年度に積み残した (C) 非有界BCK代数に関する研究成果の発表、およびファジィ・マルチ集合に関する情報収集と問題点の再検討を行い、(D) BCK代数の直積に関する精査、に着手する。
ファジィ・マルチ集合に関する先行研究においては、設定された集合演算について、ファジィ集合やマルチ集合や古典集合の集合演算理論と整合がとれない場合があるという問題点があり、その原因究明が本研究の核心となる。特にファジィ・マルチ集合の差集合演算に関しては従来研究では全く考慮されておらず、BCK代数の土俵で理論展開するために重要なポイントであり、2年目の研究段階の要となる予定である。

Causes of Carryover

コロナ禍のため参加学会が全てオンライン開催となり、旅費を予定通りに執行することが出来なかった。また、購入を予定していたノートPCは廃盤となり、その後継機種について各種ポートが削減されていて不便が予想されたため購入機種の変更を検討し、新機種流通の都合上、当該年度内の納品が間に合わなかったことで予定通りの予算執行ができなかった。

次年度に参加・発表予定の国内学会についてはハイブリッド開催が予定されており、社会情勢と自身の健康状態が許せば出張可能となり、国内旅費が執行できると期待される。PCについても近々の購入を予定している。