2021 Fiscal Year Research-status Report
Deep Micro Vibrotactile, DMV for Dementia and its Application for Dementia
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21K12108
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 泰博 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (50292983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大田 秀隆 秋田大学, 高齢者医療先端研究センター, 教授 (20431869)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 認知症 / 臨床研究 / 深層振動 / DMV / 作業記憶 / ガンマー帯域神経刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病などの認知症には有効な治療法がまだない。2019年、米国・マサチューセッツ工科大学の蔡教授らは、アルツハイマー病を発症させたマウスをもちいて、40Hzの視覚神経(点滅する光)と聴覚神経(音)の刺激が、アルツハイマー病の原因物質のアミロイドβなどを減少させることを示した。蔡教授らの方法はガンマー帯域神経刺激とよばれる。この方法のヒトへの応用が試みられているが、認知症を改善させるとの報告はない。 私たちは「40Hzの音刺激のみ」を用いて、認知症の治療へ応用する臨床研究をおこなった(研究分担者・大田秀隆 秋田大学高齢者医療先端研究センター・センター長、教授らのチームとの共同研究)。その結果、世界ではじめて、40Hzの音刺激が認知症を改善させることを確認した。 85歳以上の中程度認知症(アルツハイマー病)患者5名、および、軽度認知障害または軽度認知症の高齢者35名に対して、15〜40Hz正弦波を24時間、4週間暴露する臨床研究をおこなった。その結果、いずれの場合でも、介入前後の比較評価を行うと、『統計的に有意に作業記憶(WM)の成績が向上すること』を確認した。 臨床研究でもちいた40Hz正弦波の音刺激に対する、細胞生物応答を調査するため、鈴木(研究代表者・名古屋大学)は、酵母をもちいた実験をおこなった。40Hzの物理的な振動と、音の暴露に対する応答を比較したところ、音の暴露と、弱い物理的な振動刺激では同様の応答を示すことを確認した。音による細胞刺激についての先行研究でも、音の刺激は細胞を物理的に振動させることが指摘されている。15&から40Hzの音刺激は、細胞に対して物理的な振動刺激を加えている可能性が高い。そこで、本研究でもちいる音刺激を『深層振動』Deep Micro Vibrotactile, DMVと称することにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、40Hz正弦波の振幅を変化させることを計画していた。そのため2022年度は、まず『振幅を変化させない場合』について検討した。その研究成果は、今後行う予定である『振幅を変化させた場合』に対しての「対照群」となる。 マサチューセッツ工科大学を含め、これまでに40Hzの視覚・聴覚刺激をヒトに与えた場合に、認知症が改善されるとの報告はない。私たちの方法では、さらに他の方法で用いている『視覚神経への刺激』を使用しないため、神経刺激の種類が他の方法よりも少ない。よって、認知症の改善を示さない可能性、も予見していた。 だが、その予想に反して、2つの異なるグループ、症例をもちいた臨床研究で、認知機能の改善を確認した。そこで、2023年度は当初の計画を少し変更し、ひきつづき『振幅を変化させない40Hz正弦波』をもちいることにした。その理由は、他の研究では『振幅を変化させない40Hz正弦波』を用いているため、それらの研究と比較を行うためであった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度にひきつづき『振幅を変化させない15から40Hzの正弦波の音』をもちいて、臨床研究をつづける。現在までにおおむね40例なので、さらに症例を増やしていくこととする。 酵母をもちいた基礎研究では、(弱い)振動刺激と音刺激が同様の応答を示すことを確認している。同様の成果については、代謝産物の計測により、低周波音の暴露により、代謝産物が変化するとの報告がある。本研究では遺伝子発現について、調査する。さらに、酵母よりも高等な生物をもちいた基礎研究も行うこととする。 また、『振幅を変化させる』場合について、主に酵母をもちいて基礎研究を行い、『振幅を変化させない場合』との比較から、その違いを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
執行額の総計が、目算と異なったことによる。今年度の消耗品費に算入することとする。
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Research Products
(6 results)