2021 Fiscal Year Research-status Report
Revisit a Redfield ratio as a reference value in marine bioactive element cycles
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21K12219
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
芳村 毅 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (20371536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 勲 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (00195455)
今井 圭理 北海道大学, 水産学部, 助教 (40725983)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レッドフィールド比 / プランクトン / 有機物粒子 / サイズ分画 / 元素組成比 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋によるCO2の吸収・固定量は植物プランクトンによる炭素と栄養素の利用比率によって変化します。その比率としてレッドフィールド比が良く知られており,気候変化を予測する生態系モデルにおいて固定値として使われていますが,実測データの蓄積は十分ではありません。また,プランクトン群集はサイズの異なる多くの種で形成されますが,それらをひとまとめにした比率しか議論されてきませんでした。海洋環境の変化によりプランクトン群集組成が変化すると予測されていますが,その変化が生態系に与える影響を評価できません。そこで,本研究は有機物粒子のサイズ分画手法を確立したうえで,各サイズ画分の主要4元素組成比(炭素:窒素:リン:ケイ素)に関するデータを取得します。 研究一年目の2021年度は海水中の有機物粒子をサイズ毎に分画するための手法を検討しました。撹拌式セルを用いた限外ろ過システムを応用した「限外ろ過方式」と,孔径の異なるフィルターに連続的に通過させる「逐次ろ過方式」を並行して検討しました。その結果,限外ろ過方式はフィルター上に粒子が捕捉されてしまい,有機物粒子量を過小評価することがわかりました。有機物粒子のサイズ分画手法としては逐次ろ過方式が適していることがわかりました。逐次ろ過方式はリンおよびケイ素の分析試料を作成するのに適していますが,炭素および窒素を分析するためにはフィルター上に集めた有機物粒子を液体に懸濁させて回収する必要があります。フィルターに付着する有機物粒子を完全に回収する手法を検討した結果,超音波洗浄を利用することで達成できることがわかりました。これらの検討により,孔径の異なるメンブレンフィルターを用いた逐次ろ過方式によって有機物粒子を三つにサイズ分画し,超音波洗浄を活用して回収した有機物粒子の主要4元素を分析することで,各サイズ画分の元素組成比を分析するための道筋が完成しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究一年目である2021年度は海水中の有機物粒子をサイズ毎に分画するための手法を検討しました。一般的に高分子有機物の分子量分画に利用される撹拌式セルを用いた限外ろ過システムを応用して,フィルター孔径以上の粒子を懸濁液として濃縮・回収する「限外ろ過方式」を一つの候補としました。また,海水試料を孔径の異なるフィルターに連続的に通過させ,粒子態有機物をフィルター上に捕集する「逐次ろ過方式」も並行して検討しました。粒子態リン濃度を指標として二つの方法を比較すると,限外ろ過方式は濃度を過小評価していることがわかりました。限外ろ過方式ではフィルター上に粒子が捕捉されてしまい,懸濁液として回収できないことが要因でした。限外ろ過方式はサイズ分画手法として不適当であることが明らかとなり,逐次ろ過方式を採用することとしました。逐次ろ過方式は有機物粒子をフィルター試料として回収するため,リンおよびケイ素を分析するのに適していますが,炭素および窒素を分析するためにはフィルター上に集めた有機物粒子を液体に懸濁させて回収する必要があります。フィルター表面に洗瓶から海水を吹きかけることで洗い流すことを試みましたが,フィルターに粒子が残存してしまうことがわかりました。検討を重ねた結果,フィルターを海水に浸した状態で超音波洗浄機にかけ,さらに洗瓶からの海水で洗い流すことで,フィルター上の有機物粒子のほぼ全量を回収することができました。これらの検討により,孔径0.2,2,20 μmのメンブレンフィルターを用いた逐次ろ過方式によって有機物粒子を三つにサイズ分画する手法を確立できました。それらのフィルターを試料としてリンおよびケイ素を分析し,超音波洗浄によりフィルターから回収した粒子を含む懸濁液を試料として炭素および窒素を分析することにより,各サイズ画分の元素組成比を分析するための道筋が完成しました。
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Strategy for Future Research Activity |
研究一年目である2021年度には有機物粒子のサイズ分画手法と主要4元素の分析試料の作成方法が確立できたため,二年目となる2022年度には,複数の海域の海水試料を用いて,有機物粒子のサイズ別での元素組成比を把握します。まず,これまでバルクでの有機物粒子の元素組成を調査しているサロマ湖において,新たに開発したサイズ分画手法を活用します。バルクとサイズ分画での元素組成比を比較することが可能となります。また,プランクトン量の季節的な変化が顕著である厚岸湾においても試料を採取し,サイズ分画手法を活用します。厚岸湾では,北海道大学厚岸臨海実験所の教員がプランクトン組成に関するデータを取得していることから,我々のサイズ分画有機物粒子のデータと合わせて検討することで,化学データと生物データの融合が期待できます。これらのデータは過去に発表されたことのないものであり,高精度化学分析により価値あるデータを創出していきます。
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Causes of Carryover |
有機物粒子のサイズ分画手法の確立が順調に進んだ場合にはフィールド調査を計画していたが,手法の確立に時間を要したため,フィールド調査は次年度から実施することとし,旅費および消耗品の費用として使用することとした。
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Research Products
(2 results)