2021 Fiscal Year Research-status Report
放射線の低線量(率)慢性被ばくが精子形成に与えている潜在的リスクの可視化
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21K12236
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾田 正二 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (50266714)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低線量放射線被ばく / 低線量率放射線被ばく / ガンマ線 / メダカ / rev1 / 精巣卵 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度において、野生型メダカ(Hd-rR)とDNA修復関連遺伝子(rev1)欠損メダカにおいて、メダカの亜致死線量である10 Gy のガンマ線を急性照射(7.5 Gy / min)した後の精巣を組織学的に解析し、野生型メダカと同様にrev1欠損メダカにおいても照射直後は精原細胞が分裂を停止して精子形成が一時的に停止した後、2週間ほどで精子形成が再開され、被ばく1ヶ月後には精子形成が再開することを確認した。さらに、DNA修復関連遺伝子(rev1)欠損メダカにおいて多数の精巣卵が誘導され、p53欠損メダカの精巣における精巣卵の誘導に比して誘導される精巣卵がより多数かつ大型であり、さらに複数の精巣卵がシスト状に分化・発生することを見出した。また、京都大学放射線生物研究センターの低線量率長期照射装置を共同利用して低線量(100 mGy)のガンマ線を低線量率(100 m Gy / 7 days)で野生型メダカ(Hd-rR)に照射し、7日後にRNAを抽出しRNAseq 解析を実施した。京都大学の共同利用による照射実験は新型コロナウイルスの感染拡大の影響によりに1週間かかる照射実験を1回のみ実施することができたため、令和3年度はコントロールの照射実験のみを実施し、DNA修復関連遺伝子(rev1)欠損メダカへの照射実験は令和4年度内に実施する予定である。すでに収集していた野生型メダカ(Hd-rR)におけるトランスクリプトームのデータと総合して解析することにより、全身、筋肉、精巣における低線量率ガンマ線被ばくによる遺伝子発現パターンの変化をより統計的に正確に評価することを可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画においては京都大学放射線生物研究センターの低線量率長期照射装置を共同利用して低線量(100 mGy)のガンマ線を低線量率(100 m Gy / 7 days)にて照射する。照射実験に一週間の期間を要するため、令和3年度には新型コロナウイルスの感染拡大の影響により京都大学の共同利用による照射実験を1回のみ実施することができた(当初計画では2回の実施を予定)。そのため、令和3年度にはまずコントロールである野生型メダカへの照射実験を実施し、DNA修復関連遺伝子(rev1)欠損メダカへの照射実験は令和4年度に実施することとした。 ガンマ線の急性照射による精巣卵誘導の組織学的解析は計画通りに実施し、当初の目標を達成した。また、一度のみ実施できた低線量率照射実験においても野生型メダカ(Hd-rR)を対象としてトランスクリプトーム解析を実施し、計画通りのデータを取得することができ、解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度には、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を慎重に見定めつつ、DNA修復関連遺伝子(rev1)欠損メダカへの低線量率ガンマ線長期照射実験を実施する。京都大学放射線生物研究センターの低線量率長期照射装置を共同利用してオス12匹のrev1欠損メダカ成魚に低線量(100 mGy)のガンマ線を低線量率(100 m Gy / 7 days)にて照射し、その7日後に精巣よりRNAを抽出精製し、トランスクリプトーム解析を実施する。 また、ガンマ線(10 Gy)を急性照射(7.5 Gy / min)したrev1欠損メダカの精巣においてシングルセルトランスクリプトーム解析を実施する。 新型コロナウイルスの感染拡大の状況が許せば、2回目の低線量率ガンマ線長期照射実験を令和4年度に実施し、オス12匹のrev1欠損メダカ成魚の精巣のゲノムDNAの解析を実施する。
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Causes of Carryover |
京都大学放射線生物研究センターの低線量率長期照射装置を共同利用してガンマ線を一週間かけて照射する実験を2回実施することを計画していたところ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により令和3年度には京都大学の共同利用による照射実験を1回のみ実施できた。そのため、令和3年度に実施できなかった照射実験とトランスクリプトーム解析を令和4年度に実施することとした。
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Research Products
(3 results)