2021 Fiscal Year Research-status Report
Influence of EV shift on photochemical pollution and urban climate
Project/Area Number |
21K12268
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
安田 龍介 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50244661)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 次世代自動車 / 光化学汚染 / 都市気象 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
脱炭素化社会を目指す取り組みとして,内燃機関自動車から脱却し電気自動車に代表される無排出/低排出の次世代自動車へ移行する,いわゆる「EVシフト」が世界的な潮流となっている.本研究ではEVシフトが大気の光化学汚染とヒートアイランドに及ぼす影響をシナリオベースの数値シミュレーションにより明らかにすることを目的としている. シミュレーションに至るステップとしては,1)産業・交通・民生・自然の各部門からの排出量・排熱量の現況分布の把握,2)EVシフトに伴う自動車排出量の削減量とそれに伴う電力転嫁の推計,3)将来的な電力需要見込みと電源構成の目標/見通しと給電形態のバリエーションを踏まえたシナリオ作成,の3過程に区分して考えており,2021年度は基礎資料として,国内における自動車排出量・排熱量の現況インベントリ,発電所の改廃や新設の計画,各種産業の排出原単位,次世代自動車に関する環境性能,高効率石炭火力・再生可能エネルギー・水素生成等の発電技術に関わる諸元,電力事業者の発電実績並びにエネルギー統計等の推移に関するデータ収集を行い,将来推計に向けて電力需要量やエネルギー統計等の経年変化分析を行っている. 光化学汚染解析については,近畿圏における光化学オキシダント濃度の経年変化傾向を分析するための資料収集,光化学レジームに関する近年の研究の文献収集,種々提案されている光化学指標の特性に関する調査を行った.また,同地域のヒートアイランドについては,夏季高温事例の抽出に向けて地上気温観測データの収集整備を行った.次年度以降に実施を予定している大気環境シミュレーションに関しては,使用する数値モデルとそれに入力するためのデータベースについて計算環境のシステム整備を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の点により分析にやや遅れが生じている. ・電力が自由化されたことにより,従来の電力統計と近年の従来の統計との間の断絶や読み替えに注意を払う必要が生じていること. ・第6次エネルギー基本計画における原子力発電の扱いや石炭火力や天然ガス火力に対する国際的な厳しい批判など見通しが不透明な状況にあること. ・直近の統計指標には新型コロナウイルス感染症がもたらした社会的・経済的な停滞が反映されていると考えられ,今後シナリオ作成を行う上でこの影響の考慮が必要なこと.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は引き続き収集した資料の分析を行うとともに,2050年までを対象とする電源構成の将来シナリオを作成し排出量と排熱量の推計を行う.シナリオ作成においては,関連する社会的要素についてIPCC報告など地球温暖化解析で使用されたシナリオを参照し,これとの整合性に注意を払いつつ推計を行うこととし,再生可能エネルギーや小規模分散型発電の導入について,感度解析的に複数のケースを設定する. またこれと並行して,対象地域における都市気象と光化学汚染について,数値モデルによる現況再現シミュレーションを行い,観測データとの整合性チェックを通してモデルのパラメータのチューニングを行う.申請者は同種のシミュレーションをこれまで多く実施してきたが,土地利用や植生の分布などの地理的データについて最新の情報を収集活用する. 最終年度は都市気象場と光化学汚染の予測シミュレーションを行い,EVシフトの影響評価を行う.電源構成の将来シナリオと次世代自動車の普及率との組み合わせにより,光化学レジームや出現濃度,および,都市高温域の分布に及ぼす変化を定量化し,適切な指標を定めて定量評価を行う.シミュレーションによる分析では,京阪神地域の他,可能であれば首都圏においても実施し,気象場や汚染分布の地域特性について検討する.各種シナリオの結果を比較することにより,EVシフトが大気環境に与える影響をとりまとめる.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で学会の地方大会1件がリモート開催となったため,旅費が不要となった.今年度未使用額は次年度の学会発表や資料収集のための経費と合わせて活用する計画である.
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