2021 Fiscal Year Research-status Report
セシウムフリー鉱化法による汚染土壌への光触媒活性付与の研究
Project/Area Number |
21K12299
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
下山 巌 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (10425572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 剛 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (80772342)
馬場 祐治 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 嘱託 (90360403)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土壌除染 / 粘土鉱物 / 光触媒 / 再生利用 / セシウム / 熱処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は放射性Csを固定した汚染土壌に対して熱処理を通してCsを選択的に除去すると共に(セシウムフリー鉱化法)、その過程で得られた生成物を光触媒として再生利用することで汚染土壌を減容化することを目指している。特にCs除去が困難な粘土鉱物を多く含む汚染土壌に対してこの手法を用いることを想定し、特異なCs収着特性を示す風化黒雲母(WB)を模擬土壌とした検討が有効である。そこで非放射性Csを収着させたWBに対して様々な反応剤を添加した場合の反応生成物とCs除去との関連を明らかにするため、RbClを反応剤として用いた場合について検討した。粘土鉱物と塩化物との反応は反応剤に大きく依存し、2価のCaやMg塩化物の場合はWBの相変態を介してCsが除去されるのに対して、1価のNaやK塩化物の場合、WBの層状の結晶構造を保ったまま高温真空中でイオン交換が促進されCsが効率的に除去される。この傾向がイオン半径の大きいRbの場合も成り立つのか調べるため、Cs収着WB 100 mgにRbCl 0.5mmolを混ぜて真空加熱実験を行った。その結果、800℃、2時間の熱処理後に94%のCs除去率が得られ、WBの底面反射ピークが10.17Åに拡大した。これはWBの主な層間イオンであるK+イオンがRb+にイオン交換したことを示しており、アルカリ金属塩化物は真空中での加熱により粘土鉱物のイオン交換を促進するという我々の解釈を支持する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
補助事業期間の初年度である、今年度は、高強度キセノン光源を購入し、様々な塩化物試薬を反応剤とした場合の生成物の光触媒特性を調べる予定だったが、研究代表者が、当初計画どおりに本研究に従事することができなかったため、初年度の研究計画の大半を実施することができず、今後の研究計画の大幅な見直しが必要になったことから、遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究テーマにおいて重要性の高い亜硫酸ナトリウムを反応剤として用いた場合について検討を行う。亜硫酸ナトリウムについては既に予備検討により、600℃以上の真空加熱でWBの相変態を生じ、750℃でWBが完全に分解してCs除去率88%、800℃でCs除去率99%が得られている。この結果は硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム添加時の750℃での熱処理よりも高いCs除去率となっただけでなく、生成物の硫黄含有量も増大していることから混合アニオン化合物を形成していることが期待できる。また興味深いことに、真空加熱では大気加熱よりも高いCs除去率が得られた。そこで以下のように研究を進める。 1)Cs収着WB 100mgに対し、亜硫酸水素ナトリウム5 mmolを添加した試料に対して500℃~800℃の大気及び真空加熱実験を行い、それぞれの試料に対して蛍光X線分析、X線回折、及び走査電子顕微鏡による分析を行う。これにより生成物の組成、結晶構造、結晶粒径に関する情報を得る。 2)異なる条件で調整された粉末生成物に対して光触媒実験を行う。光源には初年度 購入した高強度キセノンランプを用いる。Cr(VI)溶液として0.2 mMのK2Cr2O7溶液30 mlと0.2 mMサリチル酸と10 mM 2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid バッファー溶液70mlからなるテスト溶液を混ぜ、粉末試料20mgを加え懸濁液を調整する。懸濁液を撹拌しながらキセノンランプを照射し、一定時間照射後に遠心分離を行う。上澄みを採取して誘導結合プラズマ発光分光により水溶液中のCr(VI)濃度評価を行う。照射時間に対するCr(VI)濃度変化をプロットし、Cr(VI)還元に関する反応速度を評価する。同様の実験を照射波長帯を変えて行い、各波長帯域での反応速度を比較する。
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Causes of Carryover |
キセノン光源を予定より安価で購入した及び研究代表者が当初計画通りに本研究に従事することできなかったことから、今年度における支出額が予定よりも少額になり、次年度使用額が生じることとなった。 次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、実験に必要な消耗品の購入に係る費用等として使用する。
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Research Products
(1 results)