2023 Fiscal Year Research-status Report
廃棄物を水素に ~代謝工学的ゲノム改変による高度水素生産菌の構築~
Project/Area Number |
21K12341
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
宮田 茂 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (90314913)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Clostridium perfringens / 水素 / 代謝工学 / ゲノム編集 / バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
ウェルシュ菌は嫌気要求度の低い偏性嫌気性菌で、現在知られている細菌のなかで最も速い増殖速度を示す水素生産菌の一種である。本研究では、ゲノム編集によりウェルシュ菌染色体を改変し、水素生産に関わる代謝系を構成する遺伝子の欠失及び挿入により水素生産性の向上を試みた。加えて、廃棄物系バイオマスからの水素生産も目指している。今までに、ldhL、ldhD及びadhEの欠失がグルコース含有培地で高い水素生産性を示すことを明らかにした。また、pduCDEの欠失がグリセロール含有培地で増殖と水素生産性を大幅に改善することを明らかにした。 今年度、各種グリセロール代謝系遺伝子を染色体上の毒素遺伝子と置換した株を構築した結果、pduを欠失させ、glpFKA及びdhaRDKLMを、それぞれθ毒素遺伝子pfoA及びα毒素遺伝子を含む領域yplC-plcと置換した株がグリセロール含有培地で最も増殖し、pdu欠失株で見られた溶菌が抑制されることを明らかにした。 一方で、廃棄物系バイオマス利用のために、他のClostridium属由来のリパーゼ遺伝子を同定し、ウェルシュ菌で高発現させることに成功した。 また、ヘミセルロース資化性を付与するために以下の実験を行った。キシロース取込系の遺伝子(xylFGH)とペントースリン酸経路とつなぐためのキシロースイソメラーゼ遺伝子(xylA)とキシルロキナーゼ遺伝子(xylB)を、染色体上のθ毒素遺伝子pfoAと置換した株を構築した。キシロース含有培地で培養した結果、キシロースを資化し、増殖と水素生産が可能であることを明らかにした。加えて、キシランの分解のために、他のClostridium属由来のキシラナーゼ遺伝子を同定し、ウェルシュ菌で高発現させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、セルロース系バイオマスや廃食油等の未(低)利用バイオマスから効率的に水素を生産可能な菌株を構築することを目的として、ゲノム編集によりウェルシュ菌の染色体を改変し、水素生産性に及ぼす効果を明らかにすることを目指している。当初から計画どおり研究が進まないことを考慮して、各課題を並行して進めることができるように研究を計画している。 2023年度は、グリセロール含有培地で増殖や水素生産が高いが溶菌しやすいpdu欠失株にグリセロール代謝系遺伝子を導入し、溶菌を抑制することに成功した。加えて、ウェルシュ菌にキシロース資化性を付与することに成功するとともに、ウェルシュ菌で高発現するリパーゼとキシラナーゼを選別した。それらのことから、全体的にはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
グルコース含有培地でもグリセロール含有培地でも、効率よく増殖し、高い水素生産性を示す株の構築を目指して、それぞれの培地でよく増殖し、高い水素生産性を示す4遺伝子を欠失させた多重欠失株を構築したが、予想に反してグリセロール含有培地での増殖が抑制された。引き続き、水素生産量が最大になる遺伝子欠失及び補充の組合せを明らかにする。また、ウェルシュ菌で高発現するキシロシダーゼを選別し、キシロース資化性を付与したウェルシュ菌に昨年度選別したキシラナーゼとともに導入し、キシラン資化性の付与を試みる。
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Causes of Carryover |
2022年度に予想に反してグリセロール含有培地における四重欠失株の増殖が抑制されたため、さらなる多重欠失株(最大7遺伝子)を構築し、増殖に及ぼす影響を調べた。プロモーター強度に問題があると考え、当初予定のない構成的発現プロモーターの検索と発現系の構築を行った。2023年度は、その他の業務の多忙と親の介護が重なり、その遅れを取り戻すことができず、「次年度使用額(B-A)」が生じた。そこで物品費を繰り越し1年延長することにした。 2024年度は、当初2022年、2023年度に計画していた研究を続行するため、使用計画に大きな変更はない。
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