2023 Fiscal Year Annual Research Report
「朝鮮人遺骨問題」と地域における国際交流に関する基礎研究
Project/Area Number |
21K12387
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
小林 知子 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10325433)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 朝鮮人遺骨問題 / 地域における国際交流 / 宗教者の人権平和運動 / 東アジア冷戦 / 信頼醸成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「朝鮮人遺骨問題」に関し、地道に続けられてきた地域における国際交流に着目し、その過程と意義を検証するものである。主には長崎県壱岐の事例に即して、従来、二国間の戦後補償問題の枠組みで論じられがちな本問題を、東アジア冷戦の実相を問いながら、地域における国際交流という視座から捉えなおす基礎研究である。 最終年度も計画通り ①壱岐における遺骨問題の展開について、地元住民や宗教者の対応、国際的な地域交流の足跡をたどりながら地域研究を進めるとともに、 ②壱岐以外の地域事例についての研究調査、および東アジアレベルでの冷戦をめぐる問題、「遺骨問題」全般に関わる基礎資料の収集・分析 を継続して行うこと そして ②から得た知見を含めつつ、①の研究成果内容を総合的にまとめた最終報告書の作成をめざしてきた。 ①については、コロナ禍で中断していた日韓合同慰霊祭が再開されることになり、関係者に遺骨返還をめざす近況を伺うとともに、慰霊祭に参加して日韓両市民・宗教者の様子を調査することができた。②に関しては対馬、舞鶴、京都、滋賀、小倉、八幡と、壱岐以外の事例についての研究を進めることができた。中国人犠牲者との対比については、花岡事件だけでなく、関東大震災問題をも調査することで、中国人遺骨問題と朝鮮人遺骨問題を総じて考察する観点の重要性について認識を深めることができ、研究発表の場でも問題提起を行ってきた。 最終報告書については、コロナ禍の影響もあって、壱岐の遺骨の韓国への返還が実現していないこと、この間、外交文書や関連団体の機関紙等、文献調査に重点を置かざるをえない状況が続いたこと等で、壱岐の事例を中心にまとめることは難しいと判断したが、浮島丸事件や花岡事件等、この間に進めてきた他地域の事例をふまえて研究の現況をまとめるとともに、本研究を通して得られた研究成果を新年度にも継続して発表してきている。
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