2022 Fiscal Year Research-status Report
感染症流行へのレジリエンス:アフリカ社会のフードシスムをめぐる協働のモデル構築
Project/Area Number |
21K12443
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
中川 千草 龍谷大学, 農学部, 准教授 (00632275)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ギニア / アフリカ社会 / フードシステム / フードチェーン / 地域食農ガバナンス / 持続可能性 / ローカルビジネス / 小規模生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模な感染症流行のピークを経て、フードシステムの見直しとレジリエンスを伴った食料生産体制に関する研究活動を行った。 2023年9月、パリ市内において、ギニア出身者に対する現地食材の流通や食文化の変容、ギニア出身者の移住先におけるコミュニティ形成および外国産の食料品を扱う店舗における、パンデミックの影響などに関するインタビューを実施した。また、パリ市内の専門書店において資料収集をした。これにより、出身地で生産された食料品の確保については、移民コミュニティにおける既存の相互扶助を基盤とするレジリエンスを伴ったフードシステムが構築されていることがあきらかとなった。また、パンデミック以降、アフリカ産の食材を扱う小売店が増加傾向にあることを確認することができた。 2023年2月から3月にかけて、現地調査を実施した。この際、養鶏場および養蜂場を訪れ、こうした新規事業が開始されるに至った背景と現状についてのインタビューを行った。さらに、農業省、商業省におけるフードシステム関連および食品の輸出入に関する情報収集を実施した。現地視察とインタビューからは、農業部門ではメインとなる作物(米や野菜)の生産と同時に、コミュニティ単位で養蜂を副業として行い、頼母子講としての機能を持たせていることや、養蜂事業を拡大し、メインの収入源とすることについての情報を収集することができた。パンデミック以前から、複数の収集源を確保している経営体は、パンデミック以降も安定した事業展開が可能となっていることがあきらかとなった。養鶏は、養蜂に比べ多くの初期投資が必要となるため、スモールビジネスとして位置づけることは難しいということについての情報も得られた。タンパク源の国内自給率向上に向けて、政府はスタートアップ支援を表明しており、その規模、継続性について今後フォローアップしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Covid-19流行の影響が残る前半は、現地協力者によるリモート調査を実施した(2022年4月から2022年7月にかけてConakyからのレポート、2022年5月に内陸の街Dalabaへの出張調査)。その後、海外調査の環境が整ったことに伴い、現地調査を二度実施することができた。現地調査を通して、協力者間のネットワーク形成が確実なものとなり、協働のプラットフォーム構築に着手した。昨年度までの調査であきらかとなった「国内家禽産業の隆盛」という官民一体の動向については、実際に現場を訪れることで、抱えている課題と可能性について確認することができた。また、養蜂という低い初期投資と維持管理費による生産活動がギニア国内の食料生産および貧困解決に向けて大きな可能性を持っている点、またこうした点に海外らの援助が入っている点についての情報が得られた。このように、現地調査を通して計画当初の研究テーマについての研究活動を遂行しつつ、あらたな視点が加わったということから、本研究は、おおむね 順調に進展しているという評価することができる。 また、類似の研究関心を持つ研究者と国内研究会を3回実施(2022年4月、8月、2023年2月)し、感染症からのフードシステムへの影響、肉の生産と加工とグローバリズムおよび社会的危機からの影響などに関する発表と議論を通し、そこで得られた知見を本研究にフィードバックすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、社会的危機に対応可能なフードシステムの構築に必要なツール、およびそれを阻む課題の解明に向け、感染症流行前後の一般的な食生活の様子と消費行動に関する情報を集め、具体的な影響の把握を継続する。加えて、「養鶏ブーム」という食料生産現場のあらたな動向と、強靭なフードシステムを支える一端として期待が寄せられる養蜂についての調査研究を進めたい。養蜂は従来、農家の副収入/現金収入/「小商い」/複合生業としての存在意義を示しており、先進国からの支援も少なくない。特に、初期投資が少なく済むため、参入しやすいという点や、飼料が不要であり利益率が高いという点から、現地においても期待が寄せられる事業である。そのほか、画一的な単一作物生産とは異なる、パッチワーク的な農業(食料生産)の可能性についての情報収集を行い、フードシステムのレジリエンスについての考察を深めたい。 そこで、2023年度は現地調査(ギニア)を1回実施する予定である。また、国内研究会を年4回程度、研究協力者の来日に合わせた比較検討のための現地調査や研究会を計画している。これらの成果を論文あるいは報告書としてまとめる。
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Causes of Carryover |
円安および現地の物価の高騰により、現地調査時の支出額を事前に正確に見積もることができなかったことが主な理由である。使用計画としては、調査旅費および謝金に当てる予定である。
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