2022 Fiscal Year Research-status Report
ワイマール・ナチス期ドイツにおける余暇増大とマスツーリズムの誕生
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21K12499
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
幸田 亮一 熊本学園大学, 商学部, 教授 (60153475)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 労働者ツーリズム / 労働者サイクリスト連盟 / 労働者ハイキング協会 / マスツーリズム / ワイマールドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画では、1年目にドイツを訪れて史料を収集する予定であったが、世界的な新型コロナウイルス感染症の蔓延によってできなかった。ようやく、ドイツにおいてそれが沈静化してきた頃合いを見計らって、2022年12月にフランクフルト国立図書館を訪れ、最新の研究動向を調査するとともに史料の収集を行うことができた。 2021年度から始めた文献・史料の解読とあわせて、この間の成果の一部を学会報告と学術論文の形で発表することができた。まず、学会報告では、2023年1月28日(土)に社会経済史学会九州部会において「ワイマール期ドイツにおける労働者ツーリズム」というテーマで報告した。オンライン形式だったため九州在住の研究者だけでなく、関東・関西の研究者からの質問もあってたいへん有意義であった。 この時の質疑応答も踏まえて学術論文を作成し、「ワイマール期ドイツにおける労働者ツーリズム」(『熊本学園大学産業経営研究』第42号、2023年3月発行)を出すことができた。ここでは、ワイマール期の環境変化を踏まえた上で、労働者サイクリスト連盟および労働者ハイキング協会の具体的活動を検討し、さらに労働組合と社会民主党の対応との関連で、第一次大戦前と比べてワイマール時代に労働者ツーリズムが一段と活発化したことを明らかにした。 あわせて、労働者ツーリズムの実態をさらに詳しく明らかにするために、『労働者旅行ハイキングガイドブック』を読み込み、その歴史的位置づけについて検討を重ねているところであり、これは2023年度中に具体的な成果となる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は新型コロナ感染症がまだ世界的に蔓延している状況だったために、当初の計画どおりにドイツを訪問し史料を収集することができず、なかなか厳しいスタートとなった。しかし、2年目には、ヨーロッパにおける新型コロナ感染症が落ち着いてきた頃合いをみはからってドイツを訪れることができ、念願の史料収集を行うことができた。 それにより学会発表と論文発表ができ、あわせて、次の発表の準備も進めており、着実に後れを取り戻しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ワイマール期の労働者ツーリズムについて解明すべき課題が残っている。とくに、ワイマール期末期に出た『労働者旅行ハイキングガイドブック』の分析を進め、本書が何を目指しどのような情報を提供しようとしたのかを明らかにする。 次に、今後の研究の重点はナチス期の研究に移る。最初に、ナチス期の旅行について分析した先行研究を踏まえ、ワイマール期の合理化運動のなかで問題となった労働と余暇の関係を整理する。その上で、ナチス政府が、それまでのワイマール期の労働者ツーリズムの成果と課題をどのように把握し、何を継承し、何を継承しなかったのかを検討する。次に、ナチスによる余暇組織である歓喜力行団の旅行計画のプロパガンダの面と実質的側面との分析に移る。その後で、民間の旅行会社や旅行組織がマスツーリズムの拡大にどのように貢献したのかを明らかにする。 その際、ハハトマンやアッペルらの先行研究の成果と課題を整理し、日本で入手できない文献・資料の調査のためにドイツに行き、図書館や文書館で資料を収集するとともに、ドイツ人の研究者と意見を交換する。
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Causes of Carryover |
日本で2022年9月まで、新型コロナウイルス感染症第7波が到来したため、国内の出張も海外出張も自粛せざるを得なかった。ようやくドイツに出張できたのは12月になったため、授業との関係もあり一週間しか滞在できなかったので、とりわけ出張費の支出が少なくなった。今年度は勤務先の夏期休業期間を利用してドイツに出張し、ナチス時代のツーリズム関係の資料を収集する。そのために次年度使用額のかなりを充当する予定である。
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