2022 Fiscal Year Research-status Report
メディア上のいわゆる「新型うつ病」-精神医学の観点からみた医療報道の質の評価-
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21K12578
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北 浩樹 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (40323092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 千裕 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (60292330)
木内 喜孝 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (20250780)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | うつ病 / 新型うつ病 / 医療情報 / テキストマイニング / 新聞 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型うつ病とは,従来のうつ病とは異なる特徴をもつ抑うつ体験反応の総称である.しかし医学用語ではなく,メディアにより命名され医学的に明確な根拠のないままに流布し社会に混乱が生じている.このメディア上の新型うつ病に関する医療情報には医学的根拠を欠くものや個別具体的には適用できない治療法などがあり,実際の医療現場でも混乱を来たすことがある.そこで我々は,医学的観点からみたメディア上における新型うつ病に関する医療情報の検証が必要と考えた.本研究ではメディアとして新聞を取りあげて新型うつ病に関する新聞記事の検索を行い,メディアを通じて大衆へ直接提供される新型うつ病に関する膨大な医療情報の実態を,テキストマイニングの手法を用いて明らかにする.加えて,特に治療法については医療情報の質の評価を行う.なお医療情報の質の評価は精 神科医と内科医による医学的観点から行う.当該年度においては新型うつ病に先立ち,まずうつ病に関して再評価を行い,次にうつ病と新型うつ病との関連に言及した医療情報を重点的に評価した. うつ病は一般に抑うつ気分や意欲低下,悲観的思考,思考や行動の遅延,食欲・睡眠の障害などによって特徴付けられる.うつ病に関する記事の解析をテキストマイニングによって行った結果,特徴的な語としては「自殺」が最も多く,題材としてはうつ病の概要やうつ病患者の実態はもとより,自殺や労災に関するものが多かった.自殺と労災の題材は重要な医療情報の提供の観点からも,うつ病が社会に与える影響の観点からも的確に選択されていたと考えられた.しかし,うつ病を構成する主要な症状である睡眠を題材とした記事は少なかった.加えて,新型うつ病との関連について言えば,うつ病と新型うつ病との関連を明確に示した評論はごく少数であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 主たる研究対象疾患は新型うつ病であるが,新型うつ病に加えてうつ病に関しても抽出と解析を行い,最終的にはうつ病と新型うつ病との比較を加味したうえで最終目的である新型うつ病の解析を行う.令和4年度においては,うつ病を対象として新聞記事の抽出と解析を完了し,令和5年度以降の研究の展開を円滑に遂行可能とした. 新聞記事の抽出と解析は,新聞記事検索ソフトの使用,テキストマイニングソフトの使用ともに技術的に問題なく行い,研究方法を確立した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は対象疾患を本研究の主目的である新型うつ病に発展させ,令和3年度,4年度に行った方法と同様の方法にて新型うつ病に関する新聞記事の抽出と解析を行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症流行のため学会出張が自粛となり旅費の使用がなくなった.次年度においては学会出張が見込まれることから,当初予定の学会出張に加えて,より多くの学会への出張費用に充当することで,広く新型うつ病に関する情報収集を行う. その他については,対象とする新聞の種類や検索範囲を拡大することを予定しているため,そのための検索費に充当する.またテキストマイニングは,他のソフトの追加使用を予定している.さらに,このソフトの購入に加えてマイニング結果の多変量解析統計ソフトの購入費用にも充当する.
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