2021 Fiscal Year Research-status Report
Quantification of visual texture of tangible cultural properties and development of 3DCG reproduction method
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21K12595
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
田中 法博 長野大学, 企業情報学部, 教授 (90387415)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文化財 / 3DCG再現 / 視覚的質感 / 画像計測 / 光反射モデル / 材質 / 光反射計測 / 化粧品 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚的質感をデジタルアーカイブできるシステムの試作をした.まず申請者が開発した光反射モデル(N. Tanaka and K. Mochizuki 2013)をベースにして,質感計測の知見を加えることで視覚的質感を表現できる数学モデル(光反射モデル)を試作した.このとき申請者が開発した光反射計測機(N. Tanaka 2020)を改良することで,視覚的質感計測装置の初期段階の開発を行い,計測値から光反射モデルのモデルパラメータを決定できるようにした.個々の材質の特性は,この光反射モデルのモデルパラメータとして決定される.本年度の段階では単一の材質からな成る比較的単純な質感を持つ物体を対象としている. この手法では,視線や照明方向の組み合わせについて単一の条件で観測するだけでなく,様々な方向から見たり照明したりした場合の陰影や光沢の変化も含めて質感再現するため,幾何条件の変化に対する反射光の変化を数学モデルに基づいて解析する.つまり,入射角度が変化したとき,あるいは受光角度が変化したときの色信号の波形がどのように変化するのかという3次元的な解析を行う.なお,ここでいう色信号とは視覚系に入射する可視光の分光分布のことを意味する. 本年度は,材質に着目して,様々な複雑な視覚的な質感を持つ材料の質感計測を行った.本年度はコロナ禍の影響で半導体が不足しており,計測機器の調達に苦労したので,計画の一部を前倒しして,計測した質感を可視化するための3DCG再現技術も併せて開発した.試作した手法の妥当性を調べるため,研究協力者の支援を受けて江戸期の実際の文化財の材質の調査を行った. さらに本研究の応用としては文化財材質だけでなく,化粧品の化粧塗膜の視覚的質感の計測にも適用した.この結果,文化財の材質とともにいつくつかの化粧塗膜の3DCG再現を行うことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナ禍の影響で物品の購入ができないものがあり,若干の研究計画の変更が生じた.そこで次年度の計画の一部を前倒しして,文化財の視覚的質感の可視化のための3DCG再現技術の開発を行った.そのため,特に本年度は研究を遂行するために必要なソフトウェア開発に注力した形となった.ソフトウェア開発は自力で行っており,科研費で購入したPCを活用して,材質を高精度に3DCG再現できるようになった.この結果,様々な材質を対象に視覚的質感の3DCG再現が可能となるソフトウェアを試作することができた. しかし,現時点では必要な計算速度を確保するための計算機資源が不足しており,光反射モデルのモデルパラメータ推定などに予想以上の計算時間がかかっている.この計算処理の問題を改善していくことが新たにわかった今後の課題である. 以上のように本年度は,対象となる文化財の計測作業が少し遅れているが,先に3DCG再現技術を前倒しして開発できたので,当初予定していなかった研究成果を得ることが全体としては概ね順調に研究が進められている.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは本研究が適用できる文化財の対象を広げて,表面粗さ(ざらつき)を持っていたり,劣化したりしている材質の視覚的質感にも対応できるように光反射モデルを改良する.主に研究協力者の協力を得て,実際の文化財を対象に古城の建材や博物館所蔵品(甲冑,武具,彫刻,漆器等)を対象として進めたい. さらに定量化した視覚的質感情報を実際の文化財の材料の物理情報(職人による加工の仕方,材料の劣化度合い,原料の含有量等)に対応させて精密にモデルパラメータが計測できているかを調べる.これは文化財の視覚的質感を表現するために,どういった加工がなされ,材料がどれだけ劣化し,原料の含有量がどのくらいなのかといった文化財修復に必要となる物理情報を示せるかを調べることである. これらの調査研究を行う上で,現状では,計測器試作も進めていく.その点に加えて材質の分析のための計算や3DCG再現のための高速な計算をするための計算機資源が不足することが新たにわかったため,アルゴリズムの改良に加えて研究環境の改善も課題となっている.現在はクラウド上の計算サービスを使用しているが,手元に高速なCPUやGPUを用意して高速に計算できる計算環境を構築したい. また,本研究の成果は実用面でも着目されているため,独自の「文化財の3DCG展示システム」などの開発が求められており,その必要性を感じている.そのため, 「文化財の3DCG展示システム」も研究機関内に試作したい. 最終的には研究協力者の支援により,文化財の専門家と共に歴史的な考証も併せて行う.また,「視覚的質感の視覚実験」や「材質状態の調査」を行うことで提案手法の有効性を検証する.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で計測機器(カメラ等)の調達ができなかったことによる予算計画の変更があった. また,コロナ禍の影響で打ち合わせ会議がオンラインになったり,学会発表もオンラインとなってしまい旅費が使用できなかった. これらは,次年度に繰り越して対応するが,一部今年度新たにわかった課題への対応のために予算を割り振りなおしたい. 具体的には,視覚的質感の推定のための光反射モデルの計算に予想以上の計算機資源を必要とすることがわかったので,高速なGPUなどの購入に予算を割り当てる.
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Research Products
(5 results)