2022 Fiscal Year Research-status Report
Quantification of visual texture of tangible cultural properties and development of 3DCG reproduction method
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21K12595
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
田中 法博 長野大学, 企業情報学部, 教授 (90387415)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文化財復元 / 3DCG再現 / 視覚的質感 / 画像計測 / 光輝材 / 粒状物体の質感 / デジタルアーカイブ / 化粧品 |
Outline of Annual Research Achievements |
物体の視覚的質感は光反射計測に基づいて行うために,表面粗さ(ざらつき)を持っていたり,微細な粒状物体の材質の視覚的質感にも対応できるように光反射計測システムと光反射モデルを改良した.計測システムは画像計測系(カメラ)を追加することで,表面粗さにより拡散する光を,より詳細に計測できるようにした.次に,粗さ(粒度)の異なる試料を用意し,顕微鏡で表面の状態を観察し,その状態に応じて反射特性を仮定し,いくつかの数学モデルを試作した.その特性を本申請で試作している光反射計測システムを用いて計測し,試作モデルによる計算結果と比較した.本年度は,特に微細な材質(砂状・粒状の光輝材など)を対象にして,反射特性を計測できるようにした.たとえば,光輝材は様々な自然物(貝殻等)や金属などを細かく粒子状にしたものが使用される.このときの光輝材の色は主に何らかの方法で着色したものや構造色により表現される. この年度に行ったことは,対象の粗さ(粒度)に合わせた幾何モデルを構築したこと,そして,微細な材質の局所的な光反射のプロセスを計算できるようにモデルを改良したことである.まず,幾何モデルについては,砂のような粒状物体について,個々の粒状物体の大きさの変化をモデルに組み込んだことで,様々な粒径の材質に対応できるようにした.また,局所的な光反射の計算においては,構造色の表現を行うため数学モデルを構築した.これらの反射特性を計測システムで計測し,光反射モデルを用いて定量化し,その上で視覚実験により視覚的質感と対応させた.計測した質感を可視化するための視覚的質感の3DCG再現システムも併せて改良し,微細な光輝材と構造色に対応できるようにした.本年度は,詳細な精度検証まではできなかったが,粗さを持っていたり,微細な物体が集まってできたりしたような対象の視覚的質感を計測し3DCG再現できるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の目的は,粗さを持った材質の質感の定量化(数学モデル構築)と3DCG再現であった.しかし,本年度は,次のように予想以上の成果を得ることができた.幾何モデルについては,砂のような粒状物体について,個々の粒状物体の大きさの変化をモデルに組み込んだことで,様々な粒径の材質に対応できるようにでき,また,局所的な光反射の計算においても,質感再現用に構造色の表現を行うため数学モデルを構築できたことで,粗さに加えて微細な粒状物体の反射特性を数学モデルで記述でき,しかも,計測可能になったことが大きな成果である.現時点では,まだ少数の試料しか検証できていないが,本年度の成果により,これまで難しかった微細な光輝材などの質感が定量化できるようになったので,金箔などを織り込んだ複雑な刺繍などの質感を定量的に記録し,3DCG再現が可能となる. また,今回の研究成果は,文化財に限らず,ビーズやパール材を表面加工に使用している刺繍などの材質や化粧品などにも応用が可能である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗は,コロナ禍の影響で様々な修正が必要であるものの研究自体は順調に進んでいる.しかも,研究の過程で予想外にいくつか新たな重要な知見が得られた.特に砂のような粒状物体の質感において,有効な数学モデルが構築できたことと,そのモデルに対応した計測技術を開発できたことで,これまで難しかった微細な光輝材などの質感が定量化できるようになった.今回の研究成果は,文化財に限らず様々な分野に応用が可能である. 本研究の今後の推進方策であるが,2つのことについて検討が必要である. まず,一つ目は当初の予定通りに「視覚的質感を表現するための数学モデルの構築」を進めること,もう一つは「視覚的質感を文化財の映像復元やデジタルアーカイブに活かすための統一的な理論を構築」することである.本研究では,個々の材質に応じて多くの数学モデルが構築されているが,それらはまだ散発的に点在しているに過ぎない.これらのモデルを統一して,高度な技術を持つ職人が創り出した文化財の質感を定量化するための,より普遍的な理論とモデルを構築していく必要がある. 今後,構築した数学モデルをすべて検証し直して,モデルや理論を普遍化するための方策を考えていくことが新たな課題である.
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナ禍の影響があり,基本的に学会はオンラインになり出張ができなかった.また,論文の執筆が遅れており,次年度に発表する必要が生じたため. 今後の使用計画としては,まず本年度投稿が間に合わなかった論文の投稿費用や校正費用で支出する.また,次年度,挑戦すべき新たな課題がいくつか生じたので,計測器の改良費用などに使用する予定である.
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Research Products
(3 results)