2021 Fiscal Year Research-status Report
誤情報持続効果が生じる認知メカニズムの解明とその抑制方法に関する実証研究
Project/Area Number |
21K12605
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 優子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30701495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
犬塚 美輪 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50572880)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 誤情報持続効果 / 認知バイアス / 心理的要因 / 情報汚染 / デマ |
Outline of Annual Research Achievements |
誤情報持続効果(continued influence of effect of misinformation)とは,誤情報の誤りを指摘する訂正情報を知った後も,誤情報を信じ続け,その影響を受け続ける心理現象である。誤情報持続効果は,訂正情報に視覚的注意を払っていても,訂正情報を記憶していても生じる。このことは,手元のICT端末に有益な訂正情報が受信・表示されているにもかかわらず,それがユーザーの意思決定および行動変容につながらない可能性を示唆する。誤情報が社会にもたらす影響を制御するためには,誤情報持続効果が生じるより高次の認知プロセスを解明し,それらを考慮した介入手法を確立することが求められる。本研究は,ユーザーの認知と情報デザインとのインタラクションの観点から,これまでに蓄積されてきた心理学的知見を活かしつつ,ICT環境での誤情報の認知メカニズムの解明および誤情報持続効果緩和のための介入手法の検討に取り組むことを目的としたものである。 初年度である2021年度は,これまでに心理学領域で蓄積されてきた誤情報持続効果に関する研究のレビューを行った。最新の実証研究も含めて過去数十年の研究を調査することにより,誤情報持続効果が生じる心理プロセスに関する説明モデル,関連がみられた説明変数を整理するとともに,残されている課題を検討した。また,誤情報問題という社会的影響力の大きい課題に対し,現時点で実行可能な対策についても整理した。これらの研究の成果は展望論文として投稿し,学術誌に採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響で,当初予定していた実験室実験や国際・国内学会への参加を見送るなどの変更が生じた。しかし,研究目的を遂行する代替手段として,誤情報持続効果に関する実証研究を初期のものから最新のものまで収集・講読し,最新の研究動向を整理した。また,これまで日本ではほとんど言及されることのなかった誤情報持続効果について,その研究動と今後の課題を展望論文として論じ,日本の学術誌『認知科学』に採択された。感染症の影響により研究計画の変更を余儀なくされたものの,研究目的の遂行という観点からは順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究から,誤情報の問題は大きく2つのフェーズに分けられることが示された。ひとつは選択的接触の問題で,訂正情報に人が接触しにくいというフェーズである。もうひとつは,訂正情報に接触した後も誤情報持続効果により訂正の効果が十分得られないというフェーズである。これらを連続するフェーズとみなし,次年度である2022年度は,まず,選択的接触フェーズにおける心理的要因の解明に取り組む。2023年度以降は,選択的接触を緩和し,訂正情報への接触を促す介入方法の検討,そして,誤情報持続効果を緩和し,接触した訂正情報の効果を向上させる介入方法の検討に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で,国際・国内学会参加に係る旅費が発生しなかったこと,実験室実験から文献調査に切り替えたため予定していた物品購入や人件費が発生しなかったため。これらは繰越,2022年度以降の実験実施および旅費として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)