2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on the evaluation of oxidative stress of human skin based on the spectroscopy of ultraweak delayed-luminescence.
Project/Area Number |
21K12630
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 正樹 東北工業大学, 工学部, 教授 (90332981)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遅延発光 / バイオフォトン / 分光 / 皮膚 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚に光を照射すると,長寿命な極微弱発光(遅延発光)が観測される。日常浴びる程度の弱い光であっても生じる発光であり,皮膚組織の蛍光性色素分子による光増感反応,及びその過程で生成する活性酸素種が関与しているものと想定されている。しかし発光に至る過程は複雑多様で,最終励起分子を含め詳細は不明である。本研究は,遅延発光のメカニズムを,発光時系列解析及び同時多波長分光により同定し,活性酸素種の関与,さらに皮膚酸化ストレスとの関連を明らかにすることを目的とする。 令和4年度は,前年度試作した高感度同時多波長分光システムに,青色LED光照射系を組み込み,高感度2次元検出器として用いている冷却CCDの撮影周期と同期して繰り返し光照射が可能な極微弱遅延発光分光計測システムとして完成させた。まず,システムとしての性能評価を行うため,昨年度計測対象とした皮膚遅延発光への関与の可能性が推定される蛍光性物質として,糖化反応生成物を用い,物質レベルでの遅延発光分光特性の計測を行った。皮膚遅延発光のモデル系として採用した,ゼラチンと還元糖混合溶液の加熱によるアミノカルボニル反応(メイラード反応)生成物へ,青色光(470nm)を照射し遅延発光スペクトルを分光計測した。種々の還元糖によるスペクトル特性の違いについて評価を行った結果,還元糖種及び加熱時間に依存した分光的特徴が観測され,分光分析システムとして遅延発光分析のための十分な性能を有していることを確認した。また本実験系が皮膚遅延発光メカニズム解析のための実験系としても有効であることが認められた。最終年度は,フォトンカウンティングシステムによる時系列解析を併用しながら,実際のヒト皮膚による計測と各種色素を用いたモデル実験系を比較・探索することでメカニズム解析を進め,研究のとりまとめを行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極微弱遅延発光分光分析のための計測制御系を含むシステムの開発を予定通り終了し,システムの基本性能についての評価を終えた。一方発光メカニズム解析のための実験系として,各種アミノカルボニル反応によるモデル実験系での分光データの取得を行い,有効な実験系であることが確認できたことから,今後さらにモデル系での分光データの蓄積を図るとともに,ヒト皮膚によるin vivo系での遅延発光計測を本格化する。これまでのところおおむね計画通りの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
完成した極微弱遅延発光分光計測システムを用いて,ヒト手指を対象とした皮膚の遅延発光分光in vivo計測を行う。その上で,これまで探索したアミノカルボニル反応生成物を第1のモデル系として用い,物質レベルでの遅延発光分光分析を行うが,その他の皮膚に内在あるいは表在するメラニン色素やポルフィリン化合物等の蛍光色素についても遅延発光分光分析を行う。メカニズム分析については,とくに活性酸素種の関与について明らかにすることが本研究の目的であるため,予備的な実験においてin vivo系で得られている,抗酸化剤による分光的な特徴変化がモデル系でも観測されるかどうか,各種抗酸化剤による分光計測を行い詳細に検討する。in vivo系での抗酸化剤の効果については,2次元画像計測を併用しながら,複数被験者で改めて分光計測実験を行う。メカニズム解析においてこれらの分光計測データを補完するために,フォトンカウンティングによる時系列解析を併用した解析法の探索も行い,メカニズムの解析を進める。これらを通して,研究のとりまとめを行う。
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Causes of Carryover |
研究はほぼ予定通りに進捗した。残額はメカニズム解析のための物質レベルでのモデル実験用試薬として購入を予定していたものである。次年度も継続するモデル実験用として研究計画に従って使用する。
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Research Products
(3 results)