2022 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of a novel model for human beige adipocytes converted from smooth muscle-like cells
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21K12669
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
武田 行正 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40735552)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / 肥満 / 生活習慣病 / ダイレクトリプログラミング / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト成人では、褐色化(Browning)と呼ばれる現象を介して特定の脂肪組織内で誘導されるベージュ細胞が、主要な褐色脂肪細胞として機能している。しかし、脂肪組織内に散在するベージュ細胞のみを単離し、体外でその状態を維持することは困難であるため、特にヒトにおけるその発生メカニズムや褐色化の誘導因子については多くが不明である。本研究では、低分子化合物を用いてヒト皮膚由来、初代線維芽細胞から誘導されるヒト褐色脂肪細胞モデルciBA(chemical compound-induced Brown/Beige Adipocyte)の誘導メカニズムの解明を目的とした。初年度では、ciBAの誘導効率を増加させる成長因子や低分子化合物が、線維芽細胞の細胞集団をどのように変化させるか解析した。さらに、一細胞RNAシークエンス(scRNA-Seq)解析を行い、ciBAの前駆細胞について同定を試みた。今年度はその結果をさらに解析し、線維芽細胞に平滑筋様の遺伝子発現を示す特徴的な細胞集団が存在することを明らかとした。ciBAの前駆細胞の候補について、その遺伝子発現を解析し、新規なマーカーとなる遺伝子の候補を複数同定した。また、このような特徴的な細胞集団から誘導されるciBAを用いて、計画していた食品成分や成長因子から褐色化因子の探索をした。その結果、いくつかの効果の強い成分を発見し、その中で特にカプサイシンについてその直接的な褐色化効果を解析し、国際論文として報告した。また、ciBAを用いてミトコンドリア膜電位の活性が、脱共役タンパク質UCP1の遺伝子発現を抑制するという、細胞の栄養状態に依存した新規なフィードバックメカニズムを提案し報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の進歩状況は、当初の計画以上に進展していると考えられる。昨年度は、研究計画では検討のみであった一細胞RNAシークエンス(scRNA-Seq)解析を実施した。ここから得られる情報量は多く、線維芽細胞において特徴的な平滑筋様の細胞集団が存在することを特定することができた。そしてこの細胞集団を単離するため、scRNA-Seq解析の結果から細胞表面の分子マーカーの候補を特定した。また、特定の化合物や成長因子によってこの細胞集団の分布が変化することを確認した。また、ciBAを用いて褐色化に効果のあるいくつかの食品成分や成長因子を発見した。特にカプサイシンの褐色脂肪細胞に対する効果は、これまで交感神経系の活性化により間接的に作用すると考えられてきたが、今回その受容体であるTRPV1を介して直接的にciBAの褐色化を亢進することを多角的に解析することができた。また、ciBAを用いてミトコンドリア膜電位に依存した新規な褐色化メカニズムを明らかとし、国際誌へ投稿した。このような研究状況を踏まえ、本研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年は最終年度となることから、計画されている残りの実験を実施し、これまでの研究成果について統括する予定である。これまでの研究から、線維芽細胞に特徴的な平滑筋様細胞の表面に発現している分子マーカーに対する抗体を用いて、磁気活性化細胞分離(MACS)を行い、集めた細胞集団からciBAの誘導を試みる予定である。単離した細胞の増殖、代謝、遺伝子発現などの解析からキャラクタリゼーションを進める。また、単離した細胞からciBAを誘導することで、ciBAの前駆細胞になりうるかどうか解析を進める予定である。また、特定の化合物や成長因子による線維芽細胞中の平滑筋様細胞の分布の変化が、ciBAの誘導効率にどのように関係しているか解析する予定である。また研究計画に従い、iPS細胞から平滑筋様細胞を介したciBAの誘導を行い、従来の線維芽細胞から誘導されるciBAと遺伝子発現や機能の比較を行う予定である。最終年度では、ciBAを用いて計画していた食品成分や低分子化合物から新規な褐色化因子の探索を引き続き行い、さらに効果的な化合物の発見を目指す。また最近報告した、ミトコンドリア膜電位の活性に依存した褐色化メカニズムに焦点を当てつつ、他の褐色化因子の候補についても作用機序の解析を進める。これらの研究によりciBA がより生体内のヒトベージュ細胞に近い細胞モデルとして、基礎研究および創薬研究に有用であることを実証する。
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